「年上だけどいいのかな」 元女子ラグビー日本代表・田坂藍さんと通訳・榎田剛志さんの「ラグビー婚」

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「こんな年上だけどいいのかな」

 引かれ合うのに時間はかからなかった。

 ラグビージャージ50人分という重い洗濯物も「楽しくやろう」とばかり、すぐに二人で一緒に持つようになった。ケーキ入刀に先立つ、二人の“初めての共同作業”というわけだ。

 最終日は双方から「また一緒に仕事したいね」。芽生えた楕円のご縁は途切れず、藍さんが大阪で用事がある際は、剛志さんが住む名古屋で途中下車。剛志さんの上京時には一緒に食事をする仲に。やがて8月下旬に岐阜の下呂温泉で、剛志さんが「付き合ってほしい」と交際を申し出た。当時24歳の剛志さんに対し、相手の藍さんは30代だ。「付き合う=結婚前提」の気持ちを固めて「いくしかない」という一大決心だった。

 藍さんは「こんな年上だけどいいのかな。でも剛志くんは大人っぽくて年下に感じない」と快諾した。結婚を中心に、剛志さんとさまざまな人生プランを話しながら将来のことを考え始めた。

「ご縁の替えは利かないよ」

 会えるのは月1回程度。そんな遠距離恋愛を続ける中、ラグビーシーズン終わりに藍さんが名古屋へ引っ越すか否かで二人は揺れた。しばらくは遠距離で、という結論に待ったをかけたのは藍さんのご両親。母・由紀さん(61)が「もう行きなさい」と告げ、山九フェニックスの仕事を辞めることに逡巡する藍さんに父・敦さん(60)は、

「仕事の替えは利いても、ご縁の替えは利かないよ」

 藍さんにとって知り合いもいない場所だったが、女子チーム「ぎふ清流レディース」からアシスタントコーチ就任の打診があり、初心者向けの非接触型ラグビー「タグフットボール」のチーム入りも果たすなど、楕円のご縁は職にも生きた。

 もともと料理好きな藍さんは、剛志さんの料理の腕前に舌を巻いたそうだが、「でも僕は肉料理ばかり。藍ちゃんが野菜料理やスープを作ってバランスを取ってくれる」と語る剛志さんから、「一緒に食事を作ったり、公園でラグビーボールを蹴ったり、そんな毎日のささいな時間が楽しい」と、のろけは続く。ボールの転がる先は明るい。

週刊新潮 2024年2月29日号掲載

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