強風、寒暖差、筋の悪い権力者…パワハラ処分「安楽智大」が再起をかけるメキシカンリーグの“過酷な環境”を経験者が証言
日本では考えられない事が球場で起こる
ここで、メキシカンリーグでプレーをした経験を持つ、元NPB選手の話を紹介したい。最初に降り立ったメキシコ・シティ国際空港の規模は、日本の地方空港ほど。メキシコ人は米国人のように大柄な人は少なく、体格は日本人に近いが、空港では機関銃を抱えた兵士がガードマンのように立っていたという。
「球場に行くと、日本の環境がいかに恵まれているかが分かります。砂漠みたいなところにポツンと作られた球場もあって、内野手が一塁に送球したら、あまりの強風で逸れてしまったり、バッターが目を開けていられなかったりということも。日本なら、ドーム球場の建設が話し合われるでしょうが、『野球は屋外のスポーツなのだから』と言ってまったく気にしないんです」(元NPB選手)
マイクロバスで宿舎のホテルから何時間も掛けて移動することもある。出発した午前中は「暑い」と感じ、半袖でバスに乗り込んだものの、試合前の練習が始まった夕方には肌寒くなり、長袖を持ってこなかったことを後悔したことも。日本では考えられない寒暖の激しさに慣れるのも大変だったという。
こんなこともあった。試合前、球団スタッフがスタンド席の「ある方向」を伝え、「絶対にアッチを見ちゃダメ。目線も向けないように」と注意してきた。理由を聞くと、“地元の有力者”の愛人が観戦に来ており、もしもその女性と目が合ったり、声援に応えて笑顔で手を振ったりしたら、後で有力者の子分たちが来て、「ボスの大事な人に色目を使いやがって」と因縁をつけるからだという。
食事が合う、合わないも日本人選手には大きく影響してくる。地方に行くと、砂地のうえにテーブルを並べた飲食店もある。
「ホテルでシャワーを浴びようと思ったら、『el calor(HOT)』と書いてあるのに、水しか出てこないんです。明るすぎる選手も多く、夜中に誰かの部屋に集まって歌っているんです。うるさいと思って注意したら、『オレの歌、最高だろう?』と言い返されて、朝まで付き合わされたこともありました」(前出・同)
こうした生活環境の違いにも慣れていかなければならない。ただし、日本人へは好意的な人が多く、他の中南米の野球エリアよりも治安面はよく、報酬も高いほうだという。
だが、「投手・安楽」を悩ませるのは、やはり球場の問題だろう。高地に設けられた球場も多いのでホームランも出易いそうだ。安楽は直球で押すタイプなだけにピッチングスタイルの見直しも迫られる。メキシカンリーグという異国で野球を続ける厳しさが、彼をどう変えていくか。古巣・楽天の関係者も見ているはずだ。