小1男児が給食つまらせて“窒息死”…痛ましい事故も「うずらの卵」使用中止は最適解なのか? “悪者にされる食品”について考える

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誰かの責任にしなければ

 さて、2000年代にテレビ番組がしきりと大食い・早食い番組を放送していた。それの影響を受けたのか、2008年に千葉県船橋市の小学校で6年生の男児が、長さ10cmのパンをいかに早く食べられるかを競い喉に詰まらせて亡くなった。

 なお、校長は早食い競争はなかった、とメディアの取材と両親に説明したが、子供たちの間ではあった、という意見があった。両親は「今のままだと本当に可哀相。ささいなことなんです。早食い競争があったかないかなんて……。大事なことは(学校側が)本当のことを言ってくれるかどうか」とTBSの取材に答えていた。

 こうしたこともあり、学校で事故が起きると学校はとにかく責任を取らされるため、今回の迅速な「うずらの卵禁止令」に繋がったのだろう。そうなる気持ちも分かる。学校で亡くなった場合は学校の管理責任が問われ、担任や校長が処分されることもある。だが、家で同様の事故が起きても保護者は処分されない。ただし、こんにゃくゼリーのようにメーカーの加工品の場合は、改善令が出される。

ユッケとレバ刺しも「人命優先」で禁止に

 今回の件はとにかく誰かの責任にしなければ納得できない、という社会の空気感が生み出した決定だったようにも思える。一気飲みや毒キノコ中毒については分別のついた大人がやっていることから、「お前が無茶しただけだ」「バカなことするな」で自己責任とされる。だが、子供の場合は前述のパン早食いでもそうだが、学校が責任を取らされる。このままでは、処分を恐れる人々が事なかれ主義で禁止事項をバンバン作っていく社会になるのでは、と危惧している。

 何しろ日本はコロナ騒動時に実績がある。公衆衛生の名のもとでは、いかなる制限でさえ許された。これは我々が日々食べる食品にも適用はできるだろう。「人命優先」としてユッケとレバ刺しが禁止された先例もあることだし。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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