小1男児が給食つまらせて“窒息死”…痛ましい事故も「うずらの卵」使用中止は最適解なのか? “悪者にされる食品”について考える
私たちは仕事してますよ
福岡県みやま市の小学1年生の男子児童(7歳)が給食のおでんに入っていたうずらの卵を飲み込んで窒息死した件で、すぐさま各地の教育委員会は動いた。みやま市を含めた教育委員会は、給食にうずらの卵を使わない通達を公立幼稚園と小中学校に出し、福岡の県学校給食会にはうずらの卵のキャンセルが相次いだ。
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メディアも重大事故としてこの件を扱っているが、いきなりこの対応になるのは極端ではないか。もちろん、児童が命を落としたことは痛恨事であり、二度と同じ事故が起きないよう対策を徹底すべきだろう。ただ、うずらの卵は給食で何十年にもわたって採用され続け、小学生の遠足の弁当にも多く使われてきた。それが2024年、この事故が1例あっただけで、「うずらは危険」という空気感が一気に生まれてしまった。せめて学年別で使う食材を変える、といった柔軟な対応もできたのでは……。本稿では【悪者にされる食品】【悪者にされない食品】について考えてみる。
再発防止策を講じないとつるし上げをくらうのを恐れた教育委員会と学校が、「私たちは仕事してますよ」と先手を打ち、その空気感の醸成を促進した。そして、今後、専門家を交えて「危険な食材リスト」を作って献立作成に活かす、といった形になるかもしれない。あとは、煮物や炒め物、茹でた野菜等は1辺1.5cm以下でなくてはならない、というガイドラインができるかもしれない。
生産者が倒産する未来も
今回の件を受け、心配性で声の大きな一部の保護者から学校や教育委員会に対してうずらの卵の使用中止を求める意見はあがったことだろう。報道の大きさも相まって今回のスピード決定となった。だが、実際に提供されたおでんの写真を見てみると、危険とされる球形ではないものの、うずらの卵よりも大きなコンニャクと里芋と練り製品が入っている。
だが、たまたまうずらの卵で亡くなったことから今後、社会の「空気」は「うずらは危険」になった。うずらを見るだけで恐怖を抱く児童や親への配慮の側面もあるが、今後様々な食材が給食に限らず忌避されるようになり、生産者が倒産する未来も考えられる。テレビには呼吸器関連に詳しい医者が出てきてMCとこんなやり取りをするだろう。
「先生、子供たちが注意すべき食材ってうずらの卵の他に何がありますでしょうか?」
「2016年に現在のこども家庭庁が発表した『教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン~施設・事業者向け~』の『誤嚥(ごえん)・窒息につながりやすい食べ物の調理について』に詳しく書かれています。
『球形という形状が危険な食材』という項目を見ると、吸い込みにより気道をふさぐことがあるので危険、とされています。この項目にはプチトマト、乾いたナッツ・豆類(節分の鬼打ち豆)、うずらの卵、あめ類・ラムネ、球形の個装チーズ、ぶどう・さくらんぼがあります。すでにうずらの卵には警鐘が鳴らされていたのです。
『粘着性が高い食材』としては餅と白玉団子。『固すぎる食材』は噛み切れずそのまま気道に入ることがあるので危険ですが、イカですね」
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