ラジオ番組にハガキ、既読スルー問題…「不適切にもほどがある!」 メディア論でひもとく昭和と令和の「あるある」

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「恋」とメディア 恋する相手に公衆電話から電話すると親が出た!「あるある体験」

 第4話(2月16日放送)は「恋とメディア」の関係が随所に出てくる。

 キヨシが授業を受けていると、紙を折り畳んだメモが飛んでくる。そこには「静香のこと、どう思ってる?」とある。その静香は手渡しで彼にメモを渡してくる。「きのう夜ヒット観た?」。生徒、特に女子が教室で使っていた伝言メディアは昭和の時代、メモだった。

 令和のSNS体験を知るキヨシは、こうした女子たちのやりとりを「楽しいよ。ストーリーのコメントに交じって、たまにDMも来るような感じ」とたとえる。

 サカエの元夫で、キヨシの父親の井上昌和は昭和では中学生である。彼はキヨシに恋愛感情を抱き、電話ボックスから電話する。電話にはまず純子が出て、すぐにキヨシの母親サカエに代わり、説経されてしまう。公衆電話は緑色でテレフォンカードを入れるカード式。小川家の固定電話は薄いピンク色でぐるぐるのコードが受話器についている。

 個人が携帯電話を持つ前の時代だ。ドキドキしながら、恋する相手の自宅に思いきって電話をすると、親が出てきて気まずい思いをする……昭和の時代に青春を過ごした人間にとっては、甘酸っぱい「あるある」が再現されていた。

 市郎の家で留守番していたサカエの元へ純子から電話がかかってくる場面もある。電話機には布製のカバーがかぶされていて、サカエはそれをめくって受話器を取る(電話という“メディア機器”はカバーに包むものだったのだ)。その向こうの純子は、駅の黄色い公衆電話から電話をかけていて、傍らに10円玉を積み上げていた。

 電話の用件は、キヨシから買い物に付き合ってほしいと頼まれたが、待ち合わせ時刻に現れない、というものだった。昭和の待ち合わせのあるあるだろう。その後ろには、チョークで書く伝言板もあって、そこに多くの書き込みがあることが見てとれる。携帯電話もメールもない当時、待ち合わせの伝言にはこうした手書きメディアを使っていた。

 待ちかねた純子はそこを離れ、喫茶店「すきゃんだる」に女子生徒と居るキヨシを目撃してしまう。例の静香から「放課後、すきゃんだるで待ってます」というメモを手渡され、デートすることになったのだ。

 帰宅したキヨシは、純子との約束をすっかり忘れていたことに気がつく。大雨の中で待ち合わせ場所の駅に戻ると、伝言板に大きく「キヨシのバカ!」と赤いチョークで大書きされているのを見つける。待ち合わせ相手に伝える方法が少なかった時代、こうした書き込みは若者たちの恋愛の記録にもなっていた。大書きされた「キヨシのバカ!」からは、“手書き”文字ゆえの「思い」がじんわり伝わってくる。一途な愛が裏切られたことへの怒りの温度までがわかる。それはデジタル時代の現代には味わえない温もりといえる。

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