迫る日銀の「マイナス金利解除」…変動金利上昇で住宅ローンの返済は一体いくら増加するのか
若い世代の貸出残高が急増
世代別に見ると、この30年で20代30代の若い世代の貸出残高が急増している。
西岡氏によれば、固定・変動にかかわらず、住宅ローンの貸出残高(23年)は20代の平均で約3200万円。30代では約2940万円だという。これは30年前、1993年と比べるとおよそ倍近い水準になっている。
「当時は20代の残高平均が1600万円、30代で1400万円でした。住宅ローンの借り手の平均年収は、30年前が20代で650万円、30代が730万円だったのが、23年では20代で570万円、30代で690万円と下がっています。これは低金利によって、年収の低い借り手が増えていることを意味しています」
こうしたデータをもとに、変動金利がいまの水準からプラス2%になった場合、どの程度返済負担が増えるのか。
「20代と30代の場合、年間で35万円ほどの負担増です。20代30代の平均年収は600万円強ですから、年収比で5%強ほどにもなる。40代でも年間約24万円、50代では約17万円の負担が増えると見ています」
若い世代では月に約3万円も住宅ローンの返済が増え、40代でも月2万円も支出が増えることになるのだ。これは家計的に大きな痛手であろう。
ただし、金利が上がったとしても、すぐに上記のような返済額が増えるわけではない。ローンによっては銀行による「激変緩和措置」が定められているからだ。その措置は主に2つ。「5年ルール」と「125%ルール」である。
「5年ルール」は金利が変動しても元金返済を減らして、全体の返済額を5年は据え置くという制度。「125%ルール」は5年が経過して後、返済増加の負担分を全体の25%を超えないようするもの。
消費への多大な影響
一見すると、返済額が増えないように見えるが、この措置は金融機関やローンの借り方によって、適用されないケースもあるので、自身の契約を確認しておくことが重要だ。また、激変緩和措置が適用され、毎月の返済額が増えないにしても、さしあたっての元金返済が減り、元利返済額が増えるので、総体としての返済額は増加することになる。
金利が上がった場合、想定されるのは、「繰り上げ返済の増加」である。
「住宅金融支援機構のアンケートによれば、返済額が増えた場合に“繰り上げ返済する”と答えた人は全体の3割以上に上ります。特に所得の低い若年世代は繰り上げ返済をするなどして、消費を抑える傾向になると推察されます。例えば、酒などのぜいたく品、教育費を削る、旅行を控える、などですね。国は手厚い住宅ローン減税制度で住宅購入を支援してきましたが、ここで金利が上がると、消費への多大な影響が懸念されます」
一方「賃上げ」というプラス要素はあるものの、
「確かにこの間、賃金が上がっていれば、返済額が増えてもその分負担感は小さくなります。特に若年層はもともと賃金が低く抑えられているので、上がりやすい。しかし、業績の良くない中小企業や零細企業に勤めているのであれば、賃金が上がらないということも考えられます。そうした時に転職によって賃金の高い会社に移るといった対応も考えられるでしょう」
日銀による利上げは「金利のある世界」を体験したことのない世代にこそ、大きな変化がもたらされそうだ。
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