「だから俺たちは結婚できない!」中国の婚姻数が10年で半減の裏に「結納金」爆騰問題…“殺人事件”にまで発展する裏事情とは

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 日本よりも婚姻数が急減している中国でいま、結婚前に新郎が新婦側に現金を贈る中国独自の風習「彩礼」の高騰化が社会問題化しているという。若者が結婚に尻込みする理由となっているほか、彩礼をめぐる事件も頻発。ついに中国の最高裁である最高人民法院が収拾に乗り出す事態に直面している。

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 日本の結納金に相当する「彩礼」は中国に古くから伝わる婚姻慣習の一つで、北京や上海など都市部の裕福なカップルを除けば、いまでも広く行われている習わしという。中国人留学生がこう話す。

「金額はケースバイケースですが、私自身が直接知る範囲では、彩礼の最高額は3000万円、最低額は20万円です。新郎側の所得水準によって支払い額は変わりますが、新郎本人というより、両親などから支援を受けて贈るケースが大半です」

 現金を贈る趣旨については「娘を嫁に送り出すということは、家族が今後、愛しい娘に頻繁に会えなくなることを意味する。それに対するお礼と感謝の気持ち」という風に捉えられているという。

「ただし近年、彩礼の高騰化が進んでいて“平均額は400~500万円”といった報道もあるほど。私の周りには『そんなお金は払えないし、だったらもう結婚しない』と宣言している20代の友人・知人は少なくありません。さらに女性が彩礼の額で男性を値踏みし、“私のことが好きなら誠意を見せて”と試すような風潮が強まっている点も金額の吊り上げを後押ししている」

最高人民法院の“お達し”

 中国の婚姻数は683万3000組(2022年)と、1986年に統計を取り始めて以来の最低を記録。ピーク時の13年と比べると半減しており、政府もこれ以上の少子化を食い止めようと対策に躍起だ。「彩礼の高額化」はその一因と考えられているが、実はむしろ彩礼をめぐるトラブルや事件が頻発している影響のほうが大きいとの指摘もある。

「特に最近、急増しているのが離婚の際、夫側が“彩礼を返せ”と要求し、妻側が“いやだ、返さない”といってトラブルになるケースです。裁判で争ったり、刃傷沙汰や殺人事件にまで発展したケースもあり、中国では新たな社会問題となっています」(同)

 事態を重く見た中国の最高人民法院は2月1日、「彩礼」をめぐる紛争処理における法解釈を新たに提示。異例の対応として「大きな注目を集めている」と話すのは、中国在住の日本人ジャーナリストだ。

「新解釈では離婚時における彩礼の返還は原則、人民法院(裁判所)は支持しないものの、額の多寡や結婚期間、妊娠の有無、双方の過失などを総合的に判断して返還の有無は決定されるべきとの方針を示しました。それを受け、今年2月に“性格の不一致”を理由に離婚申請した湖北省のカップル(23年1月結婚・子供なし)のケースで、新郎側が結婚前に贈った現金15万元(約313万円)の全額返還が裁判所で認められ、話題となりました」(同)

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