「芸人だけでは食えないのになぜ舞台に立ち続けるのか」 ナイツ塙が“懲りない芸人”の映画を撮った理由
「純粋に仲間を増やしたいから」
6代目会長だった青空球児(82)からは、かねて会長就任を打診されていたが、その都度断っていたという。
「それが、昨年に打診された時に“やります”と答えたんです。自分でもいいタイミングだったと思うし、同じように映画もいい時期に作ることができました」
塙は会長に就任する前から積極的に協会へのスカウト活動を展開。そのかいあって、U字工事や錦鯉、オリエンタルラジオら人気コンビが相次いで入会した。
「僕がテレビに出るようになった15年ほど前は100人くらい。それが年々増え続け、いまでは倍以上が加盟しています。スカウトを続けているのは、純粋に仲間を増やしたいから」
芸人にとってのパワースポット
映画のサブタイトルには“舞台の上の懲りない面々”とある。塙はここに「芸人仲間へのリスペクトが込められている」と強調する。
「昔もいまも、売れている芸人はひと握り。といって、漫才協会の舞台に立っても生活に十分なほどには稼げません。映画のテーマが“それでもなぜ芸人は舞台に立ち続けるのか”なので、そこはぜひ、見てほしい」
自身も舞台に立つ東洋館は、芸人にとっての“パワースポット”と思いを致す。
「落ち込んだ時とか辛い時でも、芸人が東洋館の舞台に立つことで元気になっていく。それが、映画を撮っていく中で分かりました」
会長就任から8カ月だが、なすべき課題は尽きない。
「落語と同じく漫才にも真打制度があるけど、コロナ禍の影響で途絶えたまま。頑張っている若手のために、早い時期に復活させたい」
公開初日には、監督としての舞台あいさつが待っている。
「映画が大ヒットして、ものすごい興行収入を記録して、僕が勘違いしちゃう展開も面白い。けれど、大コケするのが一番いいかな。だって、ネタになるでしょ」
メガホンを手にしても変わらぬ芸人魂――。
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