ロシア制裁のブーメラン効果…ウクライナ戦争が長期化するほど経済大国・ドイツの危機は深まる
資金力はあるが…課題はインフレ
米財務省は23日「ロシア産原油に上限価格を設ける措置の実効性を高めたことによりこの3ヵ月で1バレル当たり19ドルの押し下げ効果があった」と成果を強調しているが、たとえ原油価格が下落したとしても、当分の間、ロシアは戦争を継続する資金力がある。資源大国ロシアを制裁のみで封じ込めることは容易ではないのだ。
足元のロシア経済が好調なのはたしかだが、課題が多いのも事実だ。
インフレ率は7%台とロシア中央銀行の目標値である4%を大きく上回っている。労働力不足や科学技術の停滞などが災いして、ロシア経済の潜在成長力が今後低下することは間違いないだろう。
IMFは「来年の成長率が1.1%増と大きく鈍化する」と予測している。
ロシア経済に対する評価が相半ばする中、筆者が注目したのはロシアのウラジーミル・プーチン大統領が2日、軍需産業の中心地であるトゥーラで「ロシア(経済)は欧州のどの国よりも大きくなった」と発言したことだ(2月19日付中央日報)。
ロシア天然ガス輸入停止で弱るドイツ
昨年に日本を抜いて世界第3位となったドイツのGDPをロシアが上回ることはありえないが、プーチン氏は世界銀行のデータを根拠にした。データによれば、購買力平価で算出したロシアのGDPは2022年に5兆5000億ドルで、ドイツの5兆3100億ドルを上回っていた。
各国の物価水準を考慮する購買力平価でGDPを算出する場合、物価水準が低い発展途上国は通常よりも大きく見積もられるため、ロシアがドイツを上回ったに過ぎない。ドル基準で見たドイツのGDPが、ロシアよりもはるかに大きい事実に変わりはない。
だが、欧州1位のドイツ経済はこのところ絶不調だ。
昨年の経済成長率は0.3%減だった。ロシア制裁として安価な天然ガスの輸入を停止したため、産業競争力は再び低下してしまったからだ。ドイツ経済は高インフレが景気を圧迫するスタグフレーションの様相を呈しており、「今年も2年連続でマイナス成長」との見方が強まっている。
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