画家への転身が話題の元TBS女子アナ「伊東楓さん」、能登半島地震では「人生で初めて家族と避難所へ…」 被災した地元・富山の“復興ボトル”に託す想い

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「夜はほぼ一睡もできませんでした」

 ドイツでアーティスト活動に取り組む、元TBSアナウンサーの伊東楓さん(30)が、富山県の酒造組合とのコラボ企画を進めている。コンセプトは<また、笑い 囲み 飲むために。>で、自身がこれまでに描き上げた作品に加えて、新たに制作した絵画を県内18の酒蔵が手がける日本酒の一升瓶にラベルとして使用するものだ。ご本人が取り組みへの狙いと意気込みを語った。

「去年の12月、今年1月に都内で3年ぶりとなる個展のために帰国していたんです。暮れには富山県の実家に帰省したのですが、年が明けた元日に、人生で初めての大きな震災に見舞われました。能登半島地震で、家の柱がどこにあるかを実感するような予想もしない激しい揺れで、立っていることもできない。“これは家がダメになるかもしれない”と思ったほど。大晦日には、家族や友人らと“富山は地震が少ないから良いよねえ”なんて呑気に話していた矢先のことでした」

 幸い、家族にケガはなく、実家の家屋も持ちこたえた。

「それでも、家族で初めてとなる避難所に向かいました。ただ、その後も余震がひどく、夜はほぼ一睡もできませんでした。翌日には電気や水道が生きていたので実家に戻ることができましたが、余震は断続的に続き、やっぱり慢性的な寝不足に悩まされて。先行きの見えない不安を、現実的な問題として実感させられましたよ」

 伊東さんは被災前、たまたま県内の酒造会社を訪問していたという。

「思い立って、TBSで同僚のアナウンサーだった枡田絵理奈さんに紹介してもらって、富山市の桝田酒造店に見学に行っていたんです。ここは満寿泉(ますいずみ)という日本酒を手がけている酒蔵で、社長さんは枡田さんのご親戚。富山県の酒造組合長を務めている方でした」

「私にできることはありますか?」

 発災から1週間後、伊東さんは心配のあまり、桝田酒造に電話をかけたという。

「被害の状況を聞きながら、“私にできることはありますか?”と伺いました。1月16日から東京で個展を開く予定でしたので、そこで満寿泉などの商品を販売してはどうかと。そういうこともできますよ、と提案したところ、社長さんは“僕の蔵というよりは、県の酒造組合として何かを進めたい”との意向を示されました。復興に向けた話をしているうちに、私がラベルを作って販売する方針が決まっていきました」

 ひと口に「日本酒」と言っても、その種類や味わいは限りなく多い。それだけに、口にした印象は人それぞれで千差万別だ。

「私もイメージを膨らませるために、すべての酒蔵のお酒を飲んでみました。それぞれに個性と、違った味わいや美味しさがある。加えて地元の友人たちに、酒蔵やお酒のイメージを聞いてもみました。ベルリンで知り合った友人で、日本酒に詳しい米国人女性も私の個展に来てくれて、独自の意見を聞かせてくれました。日本人とは異なる発想や独特の表現があって、彼女の意見も大変参考になりました」

 例えば、富山市で100年の歴史を誇る富美菊酒造が手がける「羽根屋」は“メロン”“グラス(草)”というイメージで、黒部市の銀盤酒造「銀盤」は“ホワイトリリー(白百合)”“コンデンスミルク”“パワフル”という具合だった。

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