8年長生きできる? 「タウリン」が持つ驚異の力とは…「投与したマウスの寿命が10%以上延びた」

ドクター新潮 ライフ

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合成と天然の違いは?

 今でこそタウリンは化学合成によって生成することができますが、戦前や戦中は全て「天然のタウリン」が用いられていました。北海道などでタウリンが豊富に含まれるタコ等の海産物を煮詰め、その煮汁を濃縮することでタウリンを調製するのです。海外でもタウリンの研究は行われていましたが、実際に海産物からタウリンを抽出し、実用的な目的で利用していたのは日本だけだったといいます。

 このような状況の中で、戦後、タウリンの作用に注目した大正製薬がタウリン入りの栄養ドリンクを開発。「リポビタンD」として大ヒットしたというわけです。

 ちなみに、現在、栄養ドリンクなどに入っているタウリンはほとんどが化学的に合成された「合成タウリン」と呼ばれるものです。戦前のように天然タウリンを抽出することもできるのですが、合成タウリンが1キロ当たり1000円程度なのに対し、天然タウリンは1キロ当たり5万円程度と50倍もの開きがある。それでいて合成タウリンの効能は天然タウリンと全く同じですから、価格の高い天然タウリンは栄養ドリンクなどにはほとんど使われていません。

日本では食品に添加できず

 ただ、日本で天然タウリンが全く利用されていないかというと、そうでもない。一部の健康食品などでは現在も天然タウリンが配合されています。というのも、日本では合成タウリンは医薬品扱いされているため、食品などに添加することができないのです。

 海外では合成タウリンも食品扱いですから、健康食品やサプリメントとして広くタウリンが利用されていますが、日本では薬機法に引っかかってしまう。栄養ドリンクはどうなっているかというと「指定医薬部外品」の扱いを受けているため、合成タウリンを用いることができるわけです。従って医薬品の指定を受けず、「清涼飲料水」として食品扱いになっている海外発の「エナジードリンク」は合成タウリンを配合できず、アルギニンなど類似物質で代替していたりします。

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