妻の妊娠中に不倫相手も妊娠させた“ズルい男”の告白 18年続けた「二重生活」を突然、破綻させた出来事

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「そうですよね……」

 そうなることはわかっていただろうと言いたいでしょと彼はつぶやいた。そうですよねと答えたが、彼は「こんなことで家庭が壊れるとは思っていなかった」と真顔で言った。本気でそう思っているようだった。世の中にはオープンマリッジとかポリアモリーとか、いろいろな関係があるから、お互いに納得しているなら問題は起こらなかったはず。尊仁さんが妻に隠したまま18年近くもきてしまった。そして妻は一夫一婦制を疑わない生活を送っていた。だから問題として捉えているのではないだろうか。

「そうですよね……」

 そう言ったまま、彼はしばし黙り込んだ。

判決を待つ重罪人

 自宅を追い出されてから、彼は事務所で寝泊まりしていたが、様子がおかしいと思った文佳さんに詰問され、真希子さんとのやりとりを白状した。

「そういうことなら、うちに泊めるわけにもいかないのが本音。ただ、事務所に寝泊まりしつづけるのは従業員にとっても印象がよくない。どこかアパートを借りたらどうかなと言われました。ただこのご時世、倹約できるところはしたい。そうしたら文佳が、『私の知り合いが古いアパートを持ってるの。そこでよければ部屋代負けてもらえるけど』って。6畳一間で風呂もないけど、昔はこういうところに住んでいたよなあ、もう一度、原点に戻るにはいいかもしれないと思って、半年近くそこに住んでいます」

 文佳さんと息子は彼を受け入れてくれている。だからこそ一緒に食事をしたあと、息子の「泊まっていけば」という言葉に甘えたくなるのだが、それは文佳さんが許してくれない。文佳さんはシングルマザーとして子どもを育ててきたことで、若いときよりずっとたくましくなった。逆に真希子さんは、昔の大胆さが消えて思慮深い女性になっている。

「ふたりとも仕事上では、勤務先に信用され、立派な肩書きを持っています。僕になんか頼らなくても生きていける」

 真希子さんはどういう判断を下すのか。それを受けて文佳さんはどうするのか。ふたりの子どもたちは父親にどんな言葉をかけるのか。いつになったら真希子さんが「ひとりで考える時間」を終えるのか。

 判決を待つ重罪人の気分だと彼は言った。はたから見たら「当然の報い」なのだが、そう片づけてしまうにはどこか不憫な気がしてならなかった。

前編【妻と不倫相手、どちらとも家庭を築く…「これが自分の誠意の示し方だった」という50歳夫の末路】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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