妻の妊娠中に不倫相手も妊娠させた“ズルい男”の告白 18年続けた「二重生活」を突然、破綻させた出来事
出産に立ち会い、涙する一方…
妻の臨月が近づいてきたころ、文佳さんの部屋に行くと、「ねえ」と彼女がベタベタ甘えてきた。珍しいことではなかったが、なんとなくいつもと違うとは感じていた。
「妊娠した、と。さすがに『えっ』と声が出てしまいました。彼女、ちょうど責任ある立場に就任したばかりで、当分、結婚も出産も考えられないと言っていたんです。『私、ピル飲むからね』と一方的に言われてもいた。僕は彼女を信頼していたんです。ところが数ヶ月前から彼女はピルをやめていたんです。あのときは血の気が引きました」
正直に言うしかない。彼は覚悟を決めた。ごめん、結婚はできない。頭を下げた。文佳さんは黙ったままだ。頭を上げられなくなった。
「離婚はしないよねと彼女が言いました。えっと顔を見たら、『やっぱり結婚してるのね』と。確認しなかった私も悪いんだけどねと、彼女は自身に言い聞かせるように言って。知っていたのかと力が抜けました。『でも子どもは生んでほしい』と思わず言ったんです。だって子どもに罪はないから。すると彼女は『わかった』って」
妻の出産に立ち会い、彼は命の誕生に涙した。ありがとう、大変だったねと妻をねぎらった。一方で、つわりに苦しむ文佳さんのもとに駆けつけて食事の世話をした。仕事にも手を抜かず、疲弊してふらふらになったこともある。だが、「すべて自分で責任をとるしかない」と彼は考えた。
「文佳は、離婚してと迫ってくることはありませんでした。認知はしてねと言っていましたが、僕はそれに対して明確には答えられなかった。認知となると戸籍に記載されてしまう。いくら僕が非常識でも、意味なく妻を傷つけたくはなかったから」
妻との間に娘が生まれてから約7ヶ月後、文佳さんとの間に息子が生まれた。ここが尊仁さんの興味深いところなのだが、彼は「妻にバレたらどうしよう」と考える前に、「かわいい子どもがふたりも僕のところにやってきてくれた」とうれしくなったと言う。少なくとも文佳さんにはすべて知られている。妻は周りに「姐さん」と呼ばれるような器の大きな女性だ。そこに彼の甘えがあったのかもしれない。
「何も文句を言えないくらい幸せ」
それ以降、彼はふたつの家庭を行ったり来たりすることが日常となった。その間に会社は少しずつ大きくなっていった。
「ボロもうけできるような事業ではありませんが、人並みの生活はできるようになりました。妻も文佳も仕事に復帰し、妻の両親も協力してくれていました。文佳のほうは時間的にどうしようもないときはベビーシッターを頼んだこともあった。ふたりとも仕事が大好きで、子どもを大事にしていて……。僕は何も文句を言えないくらい幸せだと思っていました」
二重生活は多忙だったが、慣れればそれもルーティンになるのかもしれない。だが何年経っても、文佳さんへの情熱はおさまらなかった。真希子さんとの家庭は「くつろげる場所」であり、文佳さんとのそれは「ワクワクする場所」だったという。
「うまくやっていたんですよ。というか、うまくいっていたんですよ、すべてが。それなのに何かが狂い始めたのが昨年秋のことでした」
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