「ロレックス買い付けバイト」でトラブル頻発 繰り返される“手口”をバイト経験者が明かす「2回目までは代金が振り込まれたのですが…」

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成田からシンガポールへ

 当日、成田空港に集合した買い付けのメンバーは4名ほど。メンバーの経歴は、フリーランスの男性や主婦など、様々であった。A氏はロレックスのモデル名がわかるほど、腕時計の知識があった。しかし、他のメンバーは「ロレックスって何?」レベルの知識しかなく、腕時計にまったくと言っていいほど関心のない人ばかりだったという。

 そんなメンバーの寄せ集めで大丈夫なのかと不安になってしまうが、かくして一行は成田空港から上海か香港の空港を経由し、シンガポールへ。LINEでX社の担当に現地に到着した旨を連絡し、さっそく買い付けが始まった。シンガポールには「アワーグラス」を筆頭に名だたる高級時計店があり、それらを集中的に巡るようにと指示が出たという。

 しかし、数店巡ってもお目当てのモデルは見つからない。それはそうだろう。既にロレックスの人気が上がってきており、デイトナ以外のスポーツモデルですら店頭に並びにくくなっていたのだから。シンガポールには世界中のバイヤーが買い付けに訪れていたため、店頭のショーケースにあるのは、デイデイトやデイトジャストなどのモデルばかりであった。

 ところが、数店巡った一行は、B時計店でついに「エクスプローラーがある」と言われた。しかし、案の定「デイデイトと抱き合わせなら売ってもいい」という条件付きだった。それでも迷わず、メンバーの一人がデイデイトとエクスプローラーの2点を購入した。日本円に換算すれば、400万円前後の買い物だったという。

素人集団ゆえのアクシデント

 腕時計を購入すると、様々なアングルから写真を撮り、担当者にLINEで報告することになっていた。ところが、さっそくアクシデントが起きた。腕時計本体に貼られていた保護シールを店にはがされてしまった、というのである。担当者は「すぐに店に戻って貼り直してもらうように」と命じた。

 当時、腕時計は表面の保護シールをはがされたり、ブレスレットのコマを調整されてしまうと、並行店で販売する際に新品もしくは未使用品扱いにならないことがあった。今ではロレックスの販売ルールが厳しくなり、必ず保護シールを店ではがすのが決まりとなっているというが、当時はルールが徹底されておらず、貼り直しに応じてくれたようだ。めでたし、めでたし、である。

 そして、一行はシンガポールの主要な時計店をことごとく回ったが、収穫はほとんどなし。翌日も回ったものの、やはり収穫はないに等しかった。A氏はデイトナの金無垢モデルを購入。フリーランスの男性はデイトナの最高峰・プラチナのモデルを購入したが、お目当てのステンレス製のモデルは手に入らなかった。

 購入した腕時計はどのように日本に持ち帰るのだろうか。LINEで担当者が出した指示は、「個人個人で腕に着けて帰るように」「その際、傷をつけないように慎重に扱うこと」というものだった。要は、スーツケースなどに入れると関税で引っかかる可能性がある。あくまでも観光客の体を装って帰ってくるように、ということなのだろう。一行は何のためらいもなく、「そんなものなのか」という感覚で任務を遂行したらしい。

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