「カイロを便器に流され週に何度も修理」「注意すると逆ギレ」 中国人観光客に人気の白川郷の住民が嘆く「観光公害」

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自宅の駐車場に無断でレンタカーが

 中日ドラゴンズ投手・根尾昂(23)の祖父で「白川郷荻町集落の自然環境を守る会」元会長の治吉氏(86)に聞くと、

「私たち地域住民は奇麗な雪景色を訪れた皆さんに見せてあげたいという気持ちがありますが、どんどん観光客が雪原に入るので、たくさんの足跡で汚い雪景色になってしまう。私は白川郷が世界遺産に登録される時に『守る会』の会長をして、その時からゴミの問題もあったので『あなたの手で世界遺産を汚せますか』という看板を作って啓発したのですけどね……」

 近隣住民の上手英二さん(65)は、こう憤る。

「ちょっと車で買い物に行った隙に、自宅の駐車場にレンタカーが無断で停まっているなんてことはしょっちゅうある。注意してもどかないから困ったもんだよ。歩行者天国だとでも思っているのか、道の真ん中を広がって歩くから仕方なくクラクションを鳴らすと、逆ににらまれることもある」

 ついに住民たちも堪忍袋の緒が切れたのか。中国系と思しき観光客に注意する紳士に遭遇した。

 土産物店「めめんこ」を営む和田保雄氏(65)は、

「無断でウチの敷地に入って雪上で寝転がったり雪だるまを作り始めたりするんだけど、事故とか起きたらコチラの責任問題になる。だから注意しに行くと大体が中国系の観光客。柵をしても効果がないんですよ」

 前出の井高氏に聞くと、

「雪のある一帯は私有地が多く、雪目当ての観光客が近づけばトラブルが起きる。住民の皆さんが我慢できず注意すると、外国人観光客が“店の人に怒られた”と訴えてくる場合もあります。観光協会にいる中国系スタッフに依頼して、通訳として仲裁や謝罪をしてもらい、大きな騒ぎにならないようにしています」

買い物よりもグルメ、体験

 試行錯誤を続けている井高氏は、こうも言う。

「以前はバスで来る団体客が目立ちましたが、個人旅行者が増えている印象ですね」

 昔ながらの細い道が残された白川郷では、白タクのワンボックスカーやレンタカーで無理に進入する観光客が絶えず、事故やトラブルが増えているのだ。

 こうした状況は岐阜に限った現象ではない。コロナ禍後に中国系でも個人旅行者が増えたことで、ある“異変”が起きている。かつて彼らの代名詞だった「爆買い」すなわち家電量販店やドラッグストアなどでの大量購入、いわゆる「モノ消費」は鳴りを潜め、家族単位で日本の文化を体験する「コト消費」へとシフトしているのである。

 中国に詳しいジャーナリストによれば、

「不動産バブルの崩壊でデフレ状態の中国では、海外旅行に来られるのは富裕層に限られてきて、インバウンドの“メッカ”である浅草でさえ団体で行動するスタイルは減少し、際立った日本人とのトラブルも目にしなくなりつつあります。そんな彼らの興味は、買い物よりも日本ならではのグルメや体験なのです」

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