「ママ、もうこれ以上は我慢できない」と男性は叫んだ…モスクワ劇場テロ占拠事件、極限状態58時間からの脱出と“特殊ガス”

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人生は大きく変った

 ボーイフレンドはどうなったのか。

「ゼーニヤも幸いなことに元気です。病院の検査結果も正常で、自覚症状もありません。心理的にもわたしよりずっと安定している。でも、彼にしてもあそこで死んでいたかもしれない。それを考えると気分が悪くなります。犠牲者の遺族の気持ちを察すると、本当に胸が痛みます。でもガスについて、言いたいことはありません。チェチェン紛争についてはよくわかりません。でも、あらゆる戦争には反対です」

 いまダーリヤさんはいつも通り大学に通い、普段の生活を取り戻している。

「あの事件があって、人生は大きく変ったような気がします。身近なもの、親や愛する人を尊敬し、その言動にいままで以上に関心を払うようになりました。物質的なもの、お金などはもうどうでもよくなりました。もっと単純なこと、例えば呼吸すること、ベッドで寝ること、好きなものを食べることなどを大切にしていきたいと思っています」

前編【「小銃を抱えた武装集団を見た時は特別な演出かと」「トイレは屈辱的だった」…モスクワ劇場テロ占拠事件 生存者が語った恐怖の58時間】からのつづき

松井樹

デイリー新潮編集部

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