オリックス村西良太は“真のサブマリン”に変貌を遂げていた…絶滅危惧種のアンダースローに挑戦2年目 “令和の山田久志”になれるか?

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ほとんど「ソフトボール投法」

 2月2日、オリックスのキャンプイン。

 初日のブルペンで最も注目を浴びていたのが、2年目の19歳右腕・斎藤響介だった。キレのあるストレートは「ポスト山本由伸」の呼び声も高く、その1球ごとに、カメラマンが連写するそのシャッター音が聞こえてくる。

 ええ球やな。勢いあるよな。

 そう思いながら斎藤を見ていたのだが、時間を少しずつ追うごとに、斎藤のすぐ左横で投げていた“絶滅危惧種”のアンダースローに、私の目は釘付けになった。

 村西良太は2019年、関西の名門・近大からドラフト3位で入団した。

 今季で5年目を迎える右腕だが、入団当初はサイドハンドだった。打者の手前で鋭く、かつ、小さく変化するカットボールを武器に、2022年までの3年間で2勝1セーブ13ホールドをマークしている。

 昨季は先発マウンドにも一度立っているが、7試合で未勝利。少々酷な言い方だが、質量ともに豊富なオリックス投手陣では、その存在感は年々、薄れている印象は否めない。

 今季中には27歳になる。大卒5年目のキャリアは、それこそ結果を出さなければ、自らの野球人生も危なくなる。だから、なのだろう。元々のサイドハンドから、さらに右腕を下げる「アンダースロー」に一昨年秋から取り組み始めている村西だが、その右腕は今や、ボールをリリースする時には地面に対して垂直、ほとんど「ソフトボール投法」のごとく、真下から投げているのだ。

 それこそ“真のサブマリン”へと変貌を遂げていた。

「上から投げるような意識の方がコントロールしやすい」

「これの方が、真っすぐにボールが行くんです」

 村西のイメージとしては、自分の体の前から捕手に向かって、1本の真っ直ぐなラインを引き、その線上をボールが辿っていくような軌道なのだという。

 その発想は、コントロールを重視したもので、オーバースローの腕の振りをそのまま真っすぐ、90度下に下ろしたような感覚なのだという。

 村西によると「上から投げるような意識の方がコントロールしやすいんで」。

 だから、ブルペンで見たその球も、独特の動きを見せていた。下から上への右腕の動きになるのだから、そのボールもそれこそ、一度空中に上がって下に下りてくる、小さな放物線を描くような変則的な軌道を描いている。

「去年の終盤なんかは、いい感じを見つけられたんです」

 この“ソフトボールピッチ”で、昨年のウエスタン・リーグでは1.73の最優秀防御率をマーク。チームでも、ファームでただ一人、規定投球回数(97回2/3)を突破しての99回を投げ、6勝を挙げている。

 それでも、アンダースローにフォームを変えた直後には、球速が120キロ程度しか出なかったのだという。現役時代、阪急時代の大エースで通算284勝を誇るアンダースローのレジェンド・山田久志の球を受けた経験もある中嶋監督から「力を入れるポイントを変えてみたらどうだ」というアドバイスも受けたという。

 そこで、ボールをリリースする瞬間に力を入れるようにしたことで「去年の終盤は、いい感じを見つけられたんです」。飛躍のきっかけは、間違いなくつかみつつあるようだ。

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