アジア杯では鈴木彩艶の経験不足が露呈…森保ジャパンのGKには誰が相応しいのか

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裏目に出た「若さ」

 鈴木と野澤は揃って21歳という若さも魅力的で、パリ五輪はもちろん日本代表のGKとしても期待がかかるし、代表スタッフも将来を嘱望していることだろう。

 しかしながらアジアカップ・カタール大会では鈴木の「若さ」が裏目に出たのではないだろうか。森保監督はミスをしても起用し続けることで信頼していることを示したかったのかもしれない。交代は懲罰と受け取られかねないし、自信を失う可能性もあるからだ。

 だが、全試合で失点すれば、これも自信喪失につながりかねない。プレーが萎縮したり判断に迷いが生じたりする。鈴木をユース年代から知るマスコミ関係者は「キャッチングにこだわりがあり、可能な限りキャッチしようとする。しかし、キャッチングかパンチングか迷ったように見えたのが、イラク戦の前半4分のプレーだった」と話していた。

 南野拓実のパスミスから始まったイラクの攻撃で、アリ・ジャシムのロングシュートを鈴木はパンチングで左スローインに逃げた。このスローインから右に展開され、アイマン・フサインに先制点を奪われた。2試合続けて前半で2失点しただけに、3試合目のインドネシア戦は前川を起用していれば、また違った展開になったかもしれない。

円熟期を迎えた前川

 その前川だが、彼が所属する神戸は2月17日の富士フィルム・スーパーカップでは不運な失点から川崎Fに敗れたものの、前半12分の頭上を越えるヘディングシュートはディフレクトでCKに逃げたり、ファーへのFKは飛び出してジャンプしながらフィスティングで大きくクリアしたりするなど、安定感のあるプレーを見せた。

 29歳と、GKとしても円熟期を迎えているだけに、カタールでのプレーを見たかったのは私だけではないだろう。

 日本代表のGKを改めて考察すると、3人という枠で、大迫がケガから復帰すれば正GK候補のナンバー1だろう。将来性から鈴木にも期待したいが、まずはシント=トロイデンで経験を積んで欲しい。

 そして3人目は昨年9月12日のトルコ戦で右肩を負傷して長期離脱を強いられたものの、1月12日に約4か月ぶりに実戦復帰した中村が有力だが、まずはコンディション次第といったところか。

 まだ不安要素があるなら前川というのが順当な3人で、ここに東京五輪で正GKを務め、デンデル(ベルギー)やG大阪では出番に恵まれなかったが、今シーズンは新天地の町田で再出発を期す谷晃生がどこまでアピールできるか。絶対的な「守護神」がいないだけに、彼らの競争は見物である。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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