「脳梗塞で半年入院」「要介護5」でも自宅で暮らす“ムード歌謡の帝王”「敏いとう」 愛娘が語る「愛と涙、笑いの在宅介護」日記

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見守りカメラで“間一髪”

 1971年に結成された「敏いとうとハッピー&ブルー」は「わたし祈ってます」や「星降る街角」などのヒット曲を連発。敏氏は「ムード歌謡の帝王」と呼ばれた。

「ヘルパーさんのなかには父の曲を聴いていた人もいて、それがヘルパーさんとの繋がりを深めている面もあるようです。ただ現実問題として、私とヘルパーさんだけでは回らないので、妹にも声を掛け、今は姉妹で週4日、父の介護を担っています。私の例でいうと、普段の仕事が終わる土曜日の夜に、都内の自宅から神奈川にある父の自宅へと向かい、食事の支度や薬の管理、オムツ交換やトイレの介助などに追われる日々です。お風呂に入れる時はさすがに私一人じゃムリなので、夫と一緒に入浴を補助しています」(実奈さん)

 実奈さんが本来は休日である日曜と月曜を敏氏の家で過ごしたあと、今度は「火・水が休み」の妹がやって来て、同じように介護に当たるという。

「木曜から土曜は基本、通いのヘルパーさんに任せますが、その間も父の様子を確認できるよう、自宅の4カ所に見守りカメラを取り付け、万が一の事態に備えています。実際、たまたま夜中にカメラを見ていたら、父が介護ベッドから転落する様子が映し出され、すぐにヘルパーさんを呼んで事なきを得たこともありました」(実奈さん)

iPadに夢中

 この間、「ヘルパーさんに完璧を求めない」「介護における細かいルール設定はしない」など、長く介護を続けていく上での大事なポイントにも気づかされたという。

「結局、すこしルーズな部分を残しているほうが、介護する側・される側の双方にとって良い影響を及ぼすと感じています。さらにいえば、父は要介護5ですが、できる限り家に閉じ込めないようにもしています。昔から父はディズニーランドが好きなのですが、退院後に福祉協会から車椅子のまま乗れるワゴンタイプの福祉車をレンタルし、父をディズニーランドとディズニーシーに連れて行きました。ディズニーシーには車椅子でも搭乗できるアトラクションがあるので、父もすごく楽しそうだった。実際、帰ってきてから父の笑顔が増えたと実感しています」(実奈さん)

 そこまで遠出しなくても、車椅子を押して一緒に近所のスーパーに行く機会を設けたり、家のなかで誕生日パーティーを開くなどイベントを催し、生活にメリハリを付けているという。

「また父には定期的に特養のショートステイに数日間程度、行ってもらっています。最初は面倒くさそうな素振りも見せましたが、特養の職員からiPadを渡されて操作法を教えてもらうと、すぐにYouTubeにハマって(笑)。新しく父用のiPadを買ってあげましたが、フランク・シナトラの昔の動画やNetflixで映画などを熱心に観ています。週2回のデイサービスと在宅リハビリで休む暇もない父にとって、格好のリフレッシュタイムになっているようです」(実奈さん)

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