藤井聡太八冠は50年以上ぶりに「年度勝率記録」を更新できるのか 「ここから1敗もできない」
一つも負けられない状況
永瀬九段にとっては、藤井に敗れて八冠目の「王座」を奪われた雪辱を果たした形となったのだが、これで藤井は通算42勝7敗、勝率8割5分7厘となり、
「NHK杯を制するのが大前提で、棋王戦を3連勝で防衛すれば新記録達成となりますが、もし3勝1敗となれば、47勝8敗で中原十六世名人と同率で並ぶことになります」(前出記者)
つまりは一つも負けられない状況にあるわけだ。朝日杯の敗戦後、藤井は取材に「結果は残念でしたが、充実した一日を過ごせました」と語っていた。56年前の大記録を更新するには気持ちを切り替えるしかあるまいが、将棋連盟元理事の田丸昇九段は、
「年度の勝率が8割を超えるだけでも大変な上に、50年以上、羽生さんでも破ることができなかった昭和を代表する大棋士の記録を令和の大棋士が塗り替えることになれば、大いに盛り上がるでしょう」
と、期待を寄せる。
中原十六世名人に聞くと…
そこで、取って代わられるかもしれない当の中原十六世名人に尋ねると、
「私の記録は五段の時のもの。クラスが上に行けば行くほど対戦相手も強くなり、タイトル戦になれば当然、トップ棋士同士の争いになります。従って通常、棋士の勝率というのは四、五段の頃が一番良いわけですが、藤井さんの場合はタイトル戦を戦いながらこれだけの勝率を挙げているのだから、すごいことです」
そうたたえながら、
「タイトル戦に慣れてくると、例えば七番勝負で3連勝した時にちょっとホッとしたりはするのですが、1局負けてもあまり気にならなくなり、それでは勝率が出にくくなります。現在の藤井さんは一局ごとに注力しているように見えますし、今年度に記録が更新されても全く不思議ではありません」
果たして“レジェンド超え”なるか――。年度末まで目が離せそうにない。
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