舞台「メイジ・ザ・キャッツアイ」に出演中…高島礼子は稀有な時代劇役者である理由
女性の三大時代劇をコンプリート
大川端の小さな旅籠「かわせみ」を舞台に、盗難、人探し、時には殺人など江戸の町で起こるさまざまな事件と、女主人・庄司るい(高島)と与力の弟・神林東吾(中村橋之助、現・芝翫=58)の身分違いの恋模様を描く。原作は半世紀近く愛される平岩弓枝(1932~2023)の小説で、後年、舞台化もされた。その際、高島は「『かわせみ』とともに人生を送ってきたような愛読者もいらっしゃるので、みなさんに満足いただけるるいになれるか緊張します。平岩先生は『かわせみはグランドホテルみたいにいろんな人が来て、事件を持ち込んだり、いい話をしてくれる場所』とおっしゃってました。私はその女将として、劇場のお客様にも『かわせみ』に泊まってみたいと思っていただけるよう心がけます」と語っていた。
るいが冗談めかして言う「ばかばっかり」のセリフは、橋之助の息子たちも気に入っていたという。
また、舞台では2012年に「女たちの忠臣蔵」で大石内蔵助の妻・大石りく役で主演している。この作品は四十七士を支えた女たちの愛と哀しみを描いた橋田壽賀子(1925~2021)の脚本で、1979年にTBSの「東芝日曜劇場」1200回記念作として池内淳子(1933~2010)の主演で放送され、大きな反響を呼んだ。
高島は「二幕のはじめ、討ち入りを終えた四十七士を見送る場面も大切にしたいところ。内蔵助(西郷輝彦=1947~2022)と主税の姿を見るのはこれが最後。今生の別れとなると知りながら、自分をぐっと抑えているりくの気持ちをお見せしたい」と語り、実際、ここではセリフはあまりなかったが、涙する観客はとても多かった。
大石内蔵助は多くの俳優が「一度は演じてみたい」役で、長谷川一夫(1908~1984)ら銀幕の大スターをはじめ、ドラマでも萬屋錦之介(1932~1997)、三船敏郎(1920~1997)、北大路欣也(80)、里見浩太朗(87)など名優が務めてきた。妻のりくも、山田五十鈴(1917~2012)、三田佳子、大竹しのぶど大女優が熱演してきた役である。
私は長年「女性が主役の三大時代劇」として、「くノ一もの」「大奥もの」「お姫様もの」を挙げてきた。高島は、お庭番、大奥の局、戦国の姫(浅井三姉妹のお江与)と時代劇の3大キャラクターをコンプリートした上に、大石りくも経験した稀有な女優だ。ここに「キャッツアイ」の女泥棒も加わり、さらに華やかに。時代劇ファンとして、うれしい限りである。