ルーツは満鉄?タモリほど鉄道の間口を広げた芸能人はいない… 「ブラタモリ」終了で考える功績

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グルメを取り上げない

 筆者は尾関憲一さんと何度か話をする機会があり、そのときに「ブラタモリ」制作の核心についても話を聞かせてもらったことがある。尾関さんは「ブラタモリ」を制作するにあたって、「番組内で、グルメを取り上げないこと」を信条にしていた。

 そんな信条で制作された「ブラタモリ」を、尾関さんは月刊『東京人』2014年5月号で「ブラタモリ」を旅でもただの散歩でもなく、時空を超える探検散歩と表現していた。

 同番組が人気を博すと、他局でも同種の散歩番組が相次いで放送されるようになった。しかし、「ブラタモリ」は地形や地質をはじめ幅広い分野に知悉したタモリさんの知識によって成り立っていた。同種の番組は単なる街ロケ・グルメロケで、旅や散歩の領域を出ていなかった。

 グルメは映像をつくるのが簡単で、視聴率も取りやすい。そのために、制作者側もグルメに傾斜して番組を面白くする工夫を凝らさなくなる。それゆえに内容は単調になっていく。

 一方、NHKは番組内で特定の企業や飲食店を紹介しづらく、民放のように視聴率を意識しない番組づくりができるという事情もある。

「ブラタモリ」でも、2020年1月18日 に放送された浜松では、番組冒頭で浜名湖の名産品となっているウナギ料理を食べている。しかし、これはグルメというよりも、郷土の食文化を紹介するシーンだった。

 NHK特有の制作環境が背景にあるとしても、グルメから距離を置きながら地域や都市を漫遊する番組を制作することは簡単には真似できない。そうしたグルメという要素を排除しつつ、地域や都市の魅力を伝える。そのツールとして、タモリさんが愛してやまない鉄道は最適だった。

タモリ倶楽部でも…

 タモリさんの鉄道好きは「ブラタモリ」でも存分に発揮されていたが、それ以上に鉄道好きを発揮したのは、2023年4月1日に終了した「タモリ倶楽部」(テレビ朝日系)だった。

 同番組は頻繁に鉄道企画を放送。それらの鉄道企画には、俳優の故・原田芳雄さんやミュージシャンの向谷実さん、ホリプロマネージャーで鉄道ファンとしても知られる南田裕介さんといった鉄道ファンが多く出演した。

「タモリ倶楽部」の鉄道企画は多彩な鉄道好きのタレントたちが我を忘れて熱狂する姿や熱烈なトークも見どころだったが、いずれにしてもタモリさんが鉄道好きであることが前提で成り立っていた。

 タモリさんは鉄道マニアからも一目置かれる鉄道知識が豊富な芸能人だが、いつから鉄道を好きになったのか? 「ブラタモリ」や「タモリ倶楽部」の番組中、小学生時代にクラスメイトと汽車の遊びをしたことなどを披歴している。ファンであることを自覚していたのかはともかく、小学生の頃には鉄道が好きだったことは間違いない。

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