「関係者に厳罰を科せばいい」 学校と教育委員会の「いじめ隠ぺい体質」を変えるために(中川淳一郎)

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 2021年、札幌市の市立中学に通っていた当時1年生の女子生徒が自殺しました。彼女は手書きのアンケートでいじめを受けていることを何度も訴えていましたが、担任らが情報共有を怠り、最悪の結末に。

 それを受け、今年1月下旬に市教育委員会が再発防止策を出しましたが、それを報じるニュースを見た瞬間「ちーがーうーだーろー!」と豊田真由子氏のように言いたくなりました。その防止策とは、市立小中学校の全生徒に配布しているタブレット端末の活用。いじめに関するアンケートや、心身の健康管理をするアプリを導入するそうです。

「紙だと組織的対応に難があるため、共有しやすい形にしましたし、生徒たちの健康状況もバッチリ分かります」といい、改善案は出した、とのことですが、論点がズレてる。

 あくまでも問題は「学校・教育委員会は、被害を訴える生徒に向き合え」ってことなんです。それに加えて、加害生徒を停学処分等にする。それなのに「アプリで情報がみんなに伝わりやすくなりますよー!」という対処方法を出した。どうすればいいのかは後述しますが、もう一つ懸念があります。

 学校がITを導入するとロクなことが起こらない前例があるんですよ。昨年、大分県内の複数の公立中学校では、生徒会選挙でアプリを使って投票しました。すると、誰が誰に投票したかを教員側がすべて見ることができたというのです。これに対する同市教委の担当者のコメントもズッコケます。

「今回の件を受け、タブレット端末を使用して選挙するときは、誰に投票したかがわからないアプリやソフトを活用していきたい」(読売新聞オンライン2023年10月26日)

 パンツに大麻を隠していた勝新太郎の「もうパンツははかない」を一瞬連想してしまいましたが(全然違うけど)、この発言は自分は悪くなく、アプリが悪いと言っているに過ぎない。札幌の件はこんな言い訳に聞こえる。

「紙の使用は時代遅れなので、これからはIT活用で連携します! 先生は皆忙しいんですよ、授業の他、準備や部活やPTAとかもありますし。ネッネッ、理解してください。紙が悪いんですよ」

 そして、アプリを使ってもいじめを把握できなかったらどうするか? 大分の件と同様に「もっと情報がよく分かるアプリに変更します」と言うでしょう。いや、根本が違う。いじめ問題は人災なのです。いじめる生徒と認めない学校と教委。この三者の意識が変わらない限り終わらない。

 じゃあ、どうすればいいかといえば、生徒に密告させて報奨金を渡す、ということも考えたのですがそれは倫理上マズいような気がする。となると文科省の通達事項として、以下を各学校・教育委員会に送る。

〈いじめを訴える生徒が自殺に追い込まれた場合、担任・学校長・教育委員会で調査にあたった担当者・教育長は教育者にふさわしくないと判断し解雇のうえ、遺族が請求する賠償金の支払いに向き合う責務を負う〉

 こうした罰則規定を設けることこそ、学校と教委の隠蔽(いんぺい)&責任回避体質を変えるのではないでしょうか。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

週刊新潮 2024年2月22日号掲載

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