「女性からのセクハラは見過ごされてきた」 真木よう子騒動に見る、「自虐」と「セクハラ」を混同する危うさ
「若い男性を性的に見るおばちゃん」という「自虐」のきわどさ 久本雅美、大久保佳代子ら芸人に有働由美子も
この手の話が難しいのは、女性側に全く自覚がないどころか、むしろへりくだっていると思っているふしがあるところだ。「私は若い男性を性的に見てしまう、無遠慮なおばちゃんなのだ」という、「自虐」ネタだと信じているということである。
今はあまり見なくなったが、女性芸人が若い男性アイドルやイケメン俳優と共演すると、抱きついたり唾液をぬぐうようなそぶりをしたりするのがバラエティーの「お約束」だった。久本雅美さんや大久保佳代子さんらをはじめ、きわどい言葉をかけて相手が苦笑いするまでを鉄板ネタにしていた印象が強い。
ただその文脈には、若いイケメンが好きというよりも、「分不相応な相手に秋波(しゅうは)を送る身の程知らずのブスなオバサン」というアピールの方が勝っていた。だからセクハラではなく自虐ネタのひとつとして受け入れられ、男性タレントのファンや視聴者も安心して見ることができたのだろう。テレビ局からは「笑いが分かっている」と重宝されるし、win-winの関係が成り立っていた。ただし、女性芸人たちがその扱いに傷ついていたかどうかは別にして。
同じやり方で好感度を得てきたのは、有働由美子アナウンサーだ。「あさイチ」時代の脇汗騒動から、飾り気のない人という印象を持つ人が多いはず。時に独身自虐も織り交ぜ、芸人顔負けの軽妙なトークは、「おすまししてちやほやされる仕事」という女子アナイメージを塗り替え、絶大な支持を集めてきた。
ただ有働アナの「わたしオバちゃんだから」自虐もまた、ちょっと危うい時がある。北京五輪スノーボード男子ハーフパイプ金メダリスト・平野歩夢さんに対し、「久しぶりに女心がキュンキュンとしましたね。残り少ないホルモンが出てきたみたいな気持ちになりました」とラジオで熱弁。やはり根底にあるのは、「恋愛から遠ざかっているオバちゃん」という自虐精神なのだろうが、平野選手が聞いたら戸惑っただろうなと思ったものである。
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