「不適切にもほどがある!」今回は純子とムッチ先輩…クドカンの作品にはなぜ“不良”がたくさん登場するのか

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ファミリーが勢揃い

 クドカンと磯山氏は慣れ親しんだ俳優たちによってドラマをつくるのも特徴である。それが功を奏し、チームワークの良さが画面からも伝わってくる。

 阿部サダヲは2人の作品の主演こそ初めてだが、「木更津キャッツアイ」など6作も出ている。同作で阿部が演じた猫田役は愉快だった。ウソを吐くと、ネズミ顔になってしまう男だった。

「木更津キャッツアイ」には渚の父親・犬島ゆずる役の古田新太(58)も出ていた。草野球チーム「木更津キャッツ」の面々に慕われるホームレスのオジー役だった。

 仲里依紗は2人が手掛けたNetflixのドラマ「離婚しようよ」(23年)に出演している。仮面夫婦状態から離婚に突き進む妻役だった。

 2月23日放送の第5話に登場する錦戸亮(39)は2人による「ごめんね青春!」(14年)に主演した。錦戸は若き日の犬島ゆずる役を演じると見られている。

 喫茶&バー「すきゃんだる」のトイレにポスターが貼られている小泉今日子(58)は、主演作「監獄のお姫さま」(17年)など2人の作品に計3作に出ている。小泉と2人の関係性を考えると、ポスターだけでお終いとは考えにくい。キーパーソン役でのサプライズ出演があるのではないか。

市郎はタイムパラドックスに立ち向かうのか

 今後、後半に入る。気になるのは市郎の愛娘・純子を待ち受ける運命である。

 第2回で渚は「阪神・淡路の年に母が死んじゃった」と説明した。1995年のことである。さらに第4回で市郎が娘の名前について「純子」と口にすると、渚の顔に憂いが浮かんだ。渚は純子の娘、市郎にとっては孫という見方が浮上する。

 第4回の終盤では、ゆずるが市郎に対し、「はじめまして、お父さん」と頭を下げた。気になったのは「はじめまして」という言葉。どうして初対面なのか。市郎は過去に戻れないままだったのか。あるいは純子より先に市郎が逝ってしまったのか。

 もっとも、純子にどんな過酷な運命が待ち受けていようが、市郎がタイムパラドックスの壁に打ち勝ち、運命を変えてしまうと読む。

 市郎は純子のためにパシリになり、カセットテープを買いに行ったり、「セイラーズ」のパチモノも手に入れたり。溺愛している。純子のためなら、なんだってするはず。

 第一、「意識低い系タイムスリップコメディ!!」と銘打たれたこの作品が、悲しい物語にはなるとは考えにくい。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。放送批評懇談会出版編集委員。1990年にスポーツニッポン新聞社に入社し、放送担当記者、専門委員。2015年に毎日新聞出版社に入社し、サンデー毎日編集次長。2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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