性問題を考えるヒントになる…「不適切にもほどがある!」が示した「IC」「ホモソ」「みんな誰かの娘」というキーワード

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ドラマ「不適切にもほどがある!」が示す“セクハラ”で覚えておくべきキーワードは?

 大物芸人や人気スポーツ選手ら有名人の“性”をめぐる問題が連日、テレビで報道されている。どこまでが許されるのか(許されないか)という人々の意識は、2017年の米ハリウッド発の#MeToo運動や2023年のジャニーズ性加害問題などを通じ、日本でも大きく変わった。問われているのは「いま」という時代に社会が許容する範囲だ。

 そうしたなか、TBS系ドラマ「不適切にもほどがある!」がテレビのセクシュアル・ハラスメント=セクハラ基準の問題に真正面から切りこんでいるとして話題を呼んでいる。【水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授】

 ドラマは、1986年(昭和61年)に生きる50歳の体育教師・小川市郎(阿部サダヲ)が、タイムスリップによって2024年(令和6年)を行き来しながら、昭和の価値観と令和の価値観をそれぞれ見つめ直す物語だ。妻に先立たれ高校生の娘と暮らす市郎は、野球部の顧問を務め、今ならパワハラ教師と批判されるような行為を堂々と行う。アダルトビデオや深夜番組を愛好するエッチなオヤジだ。

 タイムスリップした令和で出会い恋心を抱くようになる女性・犬島渚(仲里依紗)がテレビ局の制作現場で働いていることから、テレビのコンプライアンスがサブテーマになっている。どこまでが許容されるのか、セーフかアウトなのか。“昭和”と“令和”が交互に描かれ、見ている側に考えさせる仕掛けだ。

“昭和”のテレビ局では、局内の廊下でタバコを吸うことも許された。深夜番組では、司会者が女性のスカートを下からのぞき込んで登場したり、若い女性たちが水着姿で肢体を見せたりすることが日常的な光景として描かれる。「チョメチョメ」など性的な行為を示す隠語も大胆に使われていた。

 一方の“令和”のテレビ局では、様々なことが「セクハラ」として、アウトと判断される。そうした発言を出演者がすると、訂正や謝罪などを迫られる実状も描かれる。“昭和”の制作現場は、(今ならば)セクハラ、パワハラと指摘される言動が多々ありながらも、制作スタッフも出演者たちも自由で明るく自信満々。“令和”の制作現場はハラスメントがないようにと無難なのだが、気を遣いすぎるあまりにやってはいけないとされることが多く、息苦しい。制作スタッフも出演者もどこか自信なさげで神経質だ。そうした新旧テレビの対比も見どころで、視聴者にいろいろ考えさせる仕掛けになっている。

 性問題にかんして、このドラマが示したキーワードのひとつが「インティマシー・コーディネーター」だ。

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