金与正が岸田首相に助けを求めた理由 最大の要因は「最後の同盟国」の裏切り

国際 韓国・北朝鮮

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金与正氏のポジションとは

 与正氏は、北朝鮮で強大な権限を握る国務委員会の委員で党中央委員会の副部長と、公式には紹介される。どの機関の副部長かは、明らかにされていない。北朝鮮は、社会主義国である。社会主義国は、労働党(共産党)が最大の実権を握り、政府に指示を出す。

 労働党の最高幹部は、政治局常務委員だ。彼女は35歳という若さのため、政治局常務委員にはなれない。だが、事実上政治局常務委員以上の権限を誇示している。平壌の中では、彼女への反発を感じる人たちもいる。そのため、肩書きは抑えられている。

 それでも、宣伝扇動部副部長、組織指導部副部長、統一戦線部担当者と言われている。宣伝扇動部と組織指導部は、最重要機関である。北朝鮮の国内政治と指導者の権威は、「宣伝と扇動」によって支えられている。組織指導部は、幹部の人事を統括し、幹部の生活を支える。また政府と党の各部署の動きと政策を監督している。

大韓民国は「ない」から「ある」への逆転

 キューバは、北朝鮮にとって「最後の同盟国」であった。同じように社会主義を標榜し、反米同盟を結成した仲間だった。砂糖を安価で供給し、ミサイルや兵器を購入し、違法ビジネスにも手を貸した。その同盟国を失ってしまった。

 昨年末からの北朝鮮の戦略変化と国内の混乱は、キューバに「裏切られた歴史的事態」のためだったのだ。

 北朝鮮は、昨年末まで韓国を「南朝鮮」と表記した。これは、韓国という国家は存在しないとの意味で、軍事統一には必要な表現だった。つまり、国家でない南朝鮮に対しては戦争ではないから「軍事統一」できるとの理屈だ。

 正恩氏は昨年末に初めて「朝鮮半島に二つの国家がある」と語り、「大韓民国」と初めて、公式国名を述べた。昨年夏頃には『大韓民国』とカギカッコつきの表現があったが、これは「いわゆる大韓民国」の意味で、大韓民国を承認した発言ではなかった。

 さらに、1月には与正氏が「尹錫悦大統領」と、正式名称で韓国大統領を呼んだ。これも、初めてのことだった。これらの金兄妹の発言は、北朝鮮が大韓民国を事実上承認したことを意味する。国家として承認すると、統一戦争は国際法違反だ。「内乱」との言い訳はできない。

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