金与正が岸田首相に助けを求めた理由 最大の要因は「最後の同盟国」の裏切り
危機の原因は韓・キューバ国交正常化
北朝鮮の金与正・朝鮮労働党副部長は15日に談話を発表。日本が政治的な決断を下せば「両国は新しい未来を拓くこと」ができ、岸田首相が「平壌を訪問する日が来るかもしれない」との「個人的見解」を明らかにして、大きな注目を集めた。
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北朝鮮は、内外共に危機的状況にある。これが、金与正副部長が「岸田首相への談話」を送った背景である。なかなか上手な談話文で、日本の新聞記者や解説記事、学者の分析は、目くらましの言葉に引っかかり、裏に隠された危機と真実に近づけない。「岸田の決意を見極めるため」との、トンチンカンなコメントもあった。これでは、北朝鮮の宣伝係と揶揄されても仕方がないか。
金与正談話の前日(14日)、韓国政府はキューバとの国交正常化を発表した。日本ではほとんど関心を呼ばなかったが、北朝鮮にとっては驚愕すべき事態だ。北朝鮮が国際社会で文字通り孤立してしまった事実を、確認する事件だった。
正恩氏にいつでも面会でき、直言できる立場
北朝鮮では、指導者に直言・助言できる人物はいない。そんなこと をしたら、よくてクビ、悪いと収容所送りだ。体制は「英明な指導者」の指導で成り立っている。だから、金正恩総書記を指導する人物はいないし、いたら困るのだ。
軍の高官夫人が、夫に「指導者は何で軍事のことを、よく知っているのか」と聞いた。夫は自慢げに「俺が教えているから」と答えた。彼は翌日に逮捕され、追放に。家中に盗聴器が仕掛けられているのを、つい忘れてしまったのだ。
そんな体制の中で、金与正副部長は、正恩氏にいつでも面会でき、直言できる唯一の人物だ。金正日氏の娘で正恩氏の実の妹である。その彼女が「岸田首相」名指しの談話を発表したのは、初めてだ。その理由は、北朝鮮が困っているからだ。
これがわからないと、金与正談話は理解できない。与正氏はナンバー2の実力者だ。北朝鮮では、正恩氏に直接面会し、直言できる人物が実力者だ。それができるのは彼女しかいない。1988年生まれの35歳。スイスへの留学経験があり、独語、仏語、英語を話す。
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