大谷翔平は今季、本気で30盗塁以上を狙い行くとは思えない…MLB専門家が指摘する意外な根拠

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MLBに存在しない“トリプルスリー”

「トリプルスリーは2015年のユーキャン新語・流行語大賞の年間大賞に選出されました。もし、大谷選手が今季、MLBでトリプルスリーを達成すれば、もちろん日本人選手としては初です。山田選手を超える話題になるのは確実でしょう。スポーツ紙などが相次いで『今季の大谷は盗塁にも力を入れるようだ』と報じるのは当然だと言えます」(同・記者)

 ところが、こうした報道はMLBの実情を伝えているわけではなさそうだ。MLB研究家の友成那智氏は「そもそもMLBでは、チームもファンもトリプルスリーという概念を持っていません」と言う。

「理由は打率が重視されないからです。ラッキーなポテンヒットもあれば、好打がファインプレーに阻まれることもあるなど、打率は運の要素が多いと統計学(セイバーメトリクス)でも証明されています。MLBで重視されるのは出塁率で、これは四球を確実に選ばないと数字が上がりません。アメリカでは選球眼の良い打者が『チームに貢献している』と高く評価する野球文化があります。これはピッチャーの球数制限が厳密なためです」

落ちている走力

 先発投手が四球を4つも5つも出してしまうと、あっという間に球数制限の上限が見えてくる。打者は四球を選ぶことで、先発をKOすることができる。そのため出塁率は“フォー・ザ・チーム”の精神を体現する指標として重視されているという。

「アメリカでトリプルスリーに似た記録として“30-30クラブ”を挙げることはできます。シーズンで30本塁打以上と30盗塁以上を記録することです。これまでにバリー・ボンズ選手、サミー・ソーサ選手、マイク・トラウト選手、大谷選手の同僚であるムーキー・ベッツ選手など、名だたる大打者が達成しています。しかし、大谷選手やドジャーズの首脳陣が、今季、本気で“the 30-30 club”を狙いにいくとは思えません」(同・友成氏)

 実は大谷の走力は落ちているというデータがある。MLBには足の速さを測るスプリントスピードという指標があり、大谷は20年と21年、毎秒8・8メートルという記録を残していた。ところが、23年は毎秒8・5メートルに落ちた。

「過去に30-30クラブを達成した大打者も、20代の時の記録だったということは珍しくありません。大谷選手は今年7月に30歳を迎えるので、走力は徐々に落ちていくでしょう。本気で30-30クラブを目指すなら、今季はチャンスですし、実現するだけの身体能力は充分に持っています。しかし、そのためには筋肉を落とす必要があります。これはこれでリスクとして指摘できるはずです」

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