「子どもに外食させて親は自炊」 世帯年収1000万円はもはや「勝ち組」ではない…彼らの生活はなぜ厳しいのか

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住居選びも楽ではない

 最大の要因の一つが増税と社会保険料の引き上げだ。この20年あまりで、年収1000万~1250万円世帯の負担額は年間約165万円から約225万円へ増加した。手取り収入が60万円減ったということだ。これだけ見ても、昔の年収1000万円と、いまの年収1000万円では、実質が全く違うということがお分かりいただけるだろう。

 子育て中には住宅購入をするケースも多いが、住宅価格もかつてないスピードで上がっている。価格動向を示す不動産価格指数は直近で2010年比35%増、マンションに限ると2倍近くまで高騰している。2010年には5000万円弱だった23区の新築分譲マンションの平均価格は現在、1億円を超えるほどだ。人生設計を根本から揺るがしかねないほどの住宅価格高騰を前に、かつては通過儀礼のごとく買うのが当たり前だったマイホームも、夢のまた夢になりつつある状況だ。

「買えないから賃貸」というのも簡単ではない。不動産高騰の影響は賃貸価格にも及んでいる。ファミリー物件の賃料相場は過去最高レベルに達しており、23区では月20万~30万円の家賃を覚悟しないと暮らせない。このように、今の子育て世帯は、生活の土台となる住居選びの段階から困難に直面せざるを得なくなっているのだ。

すべて公立・国立でも1000万円超

 教育費の負担も増している。現在の学費の平均額を幼稚園から大学まで通じてみると、すべて公立・国立に通った場合でも子ども1人あたり1000万円を超える(図(1))。これは文部科学省など公的な全国データを基に計算したものだが、このデータの3年前と比べても30万円以上高くなっている。

 大学の授業料は国立大でも50年で15倍も上がり、今では在学費用は4年間で約500万円かかる。私大なら文系で約700万円、理系なら800万円超にもなる。子育て費用の中でも大学進学の負担は、かねてより特に重いといわれてきた。しかしそのスケールはここ30年で格段に上がっている。子どもの大学進学により家計が赤字転落する家庭も珍しくない。

 もっとも、大都市圏などでは高校までの教育費も高くなりがちだ。首都圏の中学受験者数は少子化にもかかわらず過去最高を更新し続けており、受験本番を迎える1月中旬から2月にかけては、SNSで「#中学受験」がトレンド入りするのがいまや毎年の風物詩だ。

 当然ながら塾代の負担は重くのしかかる。目安としては小学4年生ごろから6年生までの約3年間で、平均総額200万円前後とされているが、メインの学習塾と並行して苦手分野克服のための個別指導や家庭教師を利用することで、それ以上になる家庭もある。わが子の志望校への合格可能性を1%でも上げたいという親心が高じた結果、「課金ゲーム」のような状況が作り出されているのだろう。

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