【アスリート撮影問題】ネット上でAIによる「アスリートの性的画像」が販売されている…醜悪なコンテンツをどうすべきか
表現の自由
とはいえ、少なくとも表面上は、「実在する特定のアスリートを狙って撮影したリアルな写真」と異なっていることも事実だ。また販売されている画像のうち、一部は現実感の乏しい過激なユニフォームや、あり得ないポーズを取らせているものもある。
“これはリアルな写真ではありません”という印象を強くすることで、問題視されることを避けようとしていると考えられる。その結果、「これでアスリートの被害者は存在しなくなる」とメリットを喧伝するサイトは少なくない。
“非リアル”で満足する人が増えれば、確かに朗報なのかもしれない。果たしてAIグラビアによるアスリートの性的画像は、実際の被害を抑止する働きが期待できるのだろうか、それとも悪質な写真との差はほとんどなく、やはり撲滅すべき醜悪なコンテンツなのだろうか──?
日本学生陸上競技連合の常務理事で「アスリート性的画像」の問題に詳しい工藤洋治弁護士は「議論の前提として、表現の自由が尊重されるべきこと自体は当然です」と言う。
「仮に、販売側が言う『AIグラビアが生成した現実のモデルは実在しない画像』という主張が事実だとしたら、『俗悪なコンテンツだから表現の自由で守る必要はない』と断罪するのはさすがに難しいでしょう。その一方で、インターネットとSNSの普及と、画像処理技術の進歩により、刑法が整備された頃には想像すらできなかったような被害事例が出ていることにも注意しなければなりません。特に拡散と加工の問題は極めて重要だと思います」
拡散の問題点
Googleなどのサーチエンジンで「セーフサーチ(露骨なコンテンツを表示しない機能)」をオフに設定し、「女性アスリート」、「AIグラビア」、そして更に性的な単語を加えて検索すると、大量の画像が表示される。数十年前には考えられなかった状況であることは言うまでもない。
「SNSが普及する前であれば、良くも悪くも卑劣な画像は“マニア”の間だけでしか流通しませんでした。ところが今では、アスリート自身がインターネットで検索したり、SNSを使ったりしていると、自分が被害を受けたことが分かる画像を自ら発見してしまう時代になってしまいました。被害だけでも由々しき問題ですが、それを自分で見つけることで更に精神的なショックを受け、二重三重の被害を被ってしまうのです。『AIグラビアによるアスリートの性的画像』も拡散という観点から考えると、問題を孕んでいると言わざるを得ません」(同・工藤弁護士)
AIグラビアのアプリなどを使い、自分で画像を作成し、自分だけで満足しているのなら、法的に問題のある行動だとはなかなか言えないかもしれない。だが“自信作”をSNSなどに投稿したとなると話は違ってくる。ここで画像を有料で販売するか、無料でシェアするか、の違いは、被害を受ける側からすれば関係がない。
[2/3ページ]