ソフトバンクを戦力外になり、ヤクルトへ移籍…“24歳の元気印”増田珠を直撃 「このチームは、僕がやりたいことを応援してくれるんです。やりますよ。見ててください」

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「レギュラーだって狙っていきます」

 日本では、ボールを捉えるミートポイントを体の前、右打者なら左サイドでできる“壁の前”で、右打者なら右手で押し込み、バットのヘッドを回旋させる打ち方が正統だと言われ続けてきた。

 しかし、投手の球速が年々上がり、変化球の球種も増えた新時代には、できるだけミートポイントを後ろにしてボールを引きつけ、捉えた瞬間にもヘッドをできるだけ返さず、両手で力をボールに押し込んでいくイメージで打つのが、メジャーでも主流になっている。つまり、ダウンスイングによる「点」で捉えるのではなく「面」で捉え、運んでいくような打ち方でないと対応できないのだ。

 そのカギがインパクトの瞬間、右打者ならバットを握った際の右手、つまり“上の手の平”が上を向いている「パームアップ」になる。

「だから、あまりバットを返さないようにしているんです。神宮だから、バットに乗せたら、飛ぶと思うんです。『体全体で打て』と言われているんで。ソフトバンクのときは、こんな打ち方ばっかりだったでしょ?」

 そういって、上からかぶせるようにバットを動かし、右方向へ流すジェスチャーを見せてくれた。一転、ヤクルトではそれこそ、思い切り振りまくっている。どこか“縛り”のようなものが解けたかのようだった。

「このチームは、僕がやりたいということを応援してくれるんです。ホークスで戦力外になったときは、やっぱりショックでしたけど、ここはチャンスがあります。レギュラーだって狙っていきます。外野、空いてると思うんです。だから、やりますよ。見ててください」

 マルチプレーヤーで、終わるつもりはない。

 災い転じて福となす、とでも言おうか。ソフトバンクで磨いてきた能力を、フルに生かせるときが来た。ホークスファンにすれば「惜しいヤツを逃した」と思わせられる時が来るかも知れない。それくらい、ピタリとヤクルトの空気になじんでいる気がした。

喜瀬雅則(きせ・まさのり)
1967年、神戸市生まれ。スポーツライター。関西学院大卒。サンケイスポーツ~産経新聞で野球担当として阪神、近鉄、オリックス、中日、ソフトバンク、アマ野球の各担当を歴任。産経夕刊連載「独立リーグの現状 その明暗を探る」で2011年度ミズノスポーツライター賞優秀賞受賞。産経新聞社退社後の2017年8月からは、業務委託契約を結ぶ西日本新聞社を中心にプロ野球界の取材を続けている。著書に「牛を飼う球団」(小学館)、「不登校からメジャーへ」(光文社新書)、「ホークス3軍はなぜ成功したのか」(光文社新書)、「稼ぐ!プロ野球」(PHPビジネス新書)、「オリックスはなぜ優勝できたのか 苦闘と変革の25年」(光文社新書)、「阪神タイガースはなんで優勝でけへんのや?」(光文社新書)

デイリー新潮編集部

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