娘が生まれ「初恋の人妻」のことばかり思い出す47歳男性… SNSで再会を果たした後に待っていた悲しすぎる結末
SNSで彼女の名前が出てきた
そういえば彩花さんの子は、男の子だった。自分の母親が若いときに浮気をしたことを、いつか知ることになるのだろうか。あるいはすでに知っているのだろうか。
「子どもが生まれてから、なぜか彩花さんのことばかり心に浮かんできました。いつか再会するのかもしれないとぼんやり考えていたら、5年ほど前、SNSで彼女の名前が出てきたんです。僕の投稿に対して当たり障りのないコメントをつけていた」
再び巡り会うために自分は生きてきたのだと、景太郎さんは思った。彼女のSNSをじっくり読んだ。息子はすでに成人して独立しているようだ。
「あのあと、娘も生まれていたようです。彼女の結婚生活はごく平穏だったみたい。ホッとしたような寂しいような気もしましたが、遡って読んでいくと、以前の投稿に“忘れられない人がいる”と書いてあった。それ、僕のことなのではないかと思ったんです」
彼女の投稿を楽しみに待っている自分がいた。だが直接、連絡をとっていいものかどうか彼は悩んだ。あれから20年以上たっている。会いたい欲求は募っていたが、今さら会ってどうなるものでもないとも感じていた。
「ただ、その後、コロナ禍があったでしょう。実は僕の母はコロナ罹患が引き金になったのか、急な心臓の病気で命を落としたんです。恨みも愛もあった母親だけど、死なれてみると寂しかった。死ぬというのは、会いたくても会えないことなんですよね。肉体はなくなったけど心の中に存在はある。よくそう言う人がいるけど、僕には死は無としか思えなかった。明らかに存在がなくなるんです。二度と会えない」
二度と会えない日が来るなら、会いたいときに会いたい人に会っておきたい。そう思うのはごく自然ななりゆきだろう。そうは思ったものの、それでも彼は彩花さんに連絡をとるのを躊躇した。
「自分の家庭を壊すことになるかもしれないのが怖かったのかなあ。あるいはあの頃のような情熱を持てない自分を発見したくなかったのか……。昨年春、娘が中学受験に失敗したんです。それから部屋にひきこもるようになってしまって。あんなに仕事が好きだった妻が、休職までして娘を部屋から出そうとした。でも、思うようにはならない。母がいなくなって、妻と娘の母娘関係のバランスがおかしくなったようにも見えました。家庭って、あっけなくおかしくなっていくものですね。止めようもなく家庭内が荒れていく」
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