周囲からの“過度な敬意”は要注意…売れっ子ネット編集者が明かす「ソフト老害」にならない「5つの処世術」

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誰であろうと敬語で

 となると丁寧な扱いを受けるわけで、ここでも再び「老害度合い」は上がっていく。このままいくと自分の編集スタイルが古くなっても同じ扱いをされかねない。いつ誰が引導を渡すのか、と周囲が困り顔で接してくるのは嫌だなと思い、40歳の時に「47歳で辞めます」と両方の編集部には伝えたのである。

 こうして自らがソフト老害化していることを認識した場合、いかにして他者から老害だと思われないようにするべきか。心掛けたのは基本的には「好かれること」である。実は老害というのは“年齢がもたらすものではない”のだ。

 最初に登場したポータルサイトの編集部は32歳の私が最年長だったが、出版社の編集部は私より年上が多かった。だが、一定のポジションを得た人間であれば、年齢関係なく老害的な言動を取ってしまうのである。そのため、以下を心がけた。簡単なことである。

【1】誰であろうと敬語で喋る
【2】メールの返事はすぐにする
【3】自分のやり方を押し付けず、やりたいことを提案されたらほとんどの場合「それ、いいですね!」と相手を立てる
【4】飲みに若手から誘われたら時々おごる(年に一度の高級焼肉を要求するライターもいた)
【5】何か問題があっても謝罪するのは自分という決まりにした(ポータルサイトの場合。出版社では社員が担当した)

 恐らくこれらをやることで周囲から老害だと思われることはなかったと思うので、皆さんもソフト老害だと思われたくないのであれば、これらを実践するだけでいい。

ワシらの頃は

 一方で、今の時期には、ソフト老害の姿を具体的に見ることができる機会がある。

 それはプロ野球のキャンプに訪れるOBや野球評論家の姿である。さすがに現在の60代以下は「ワシらの時代の方がスゴかった」的な物言いはせず、現代のトレーニング法を尊重し、選手や監督・コーチをホメる。だが、高齢のOB・評論家は時にこんなことを言いがちだ。

「ワシらの頃は1シーズンを乗り切る体力を作るため、走り込みをしたものだ」

「筋トレをするよりも素振りをしなさい」

「なんですか、このトレーニング方法、コーチが目立つためだけにやっていますよ」

 そして、彼らが期待の若手にバッティングフォーム等の指導をしている映像を見たこともあるだろう。だが、正直選手からすると「古臭いんだよ……」と思っているかもしれない。さらには、「あなた達がいた時よりも今のピッチャーの方が遥かにレベルが高いんですけど……」「僕はダルビッシュ有さんからも直接指導を受けているのですが……」と思っているかもしれない。OB・評論家がグラウンドを去った後、選手同士で「はぁ~、毎年〇〇さん、ここに来るんだけど、監督も困ってるし、バッティング指導されるオレらもしおらしくはしているけど、本当は有り難迷惑なんだよね」なんて会話をしているかもしれない。

ストイックな姿勢を

 こうしたOB・評論家の姿は基本的には「私の方がキャリアの短いあなたよりも野球に詳しい」といったプライドから来るものであろう。若手評論家の中には驚くほど腰が低く、選手から教えを請い、彼らのストイックな姿勢を絶賛する人もいる。こうした評論家は「ソフト老害」と選手から思われることはない。そういった意味では、前田智徳氏(52歳・元広島)や里崎智也氏(47歳・元ロッテ)といった若手野球評論家の姿勢は、自身が職場でソフト老害扱いされないための参考になるかもしれない。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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