「この人を見ていたいという顔になれれば」 東出昌大が語った狩猟への複雑な思い

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 俳優、東出昌大(36)の、人里離れた山間での狩猟生活を追うドキュメンタリー映画「WILL」(エリザベス宮地監督)が16日から全国順次公開される。

 4年前に不倫が露見して離婚し、所属事務所からは契約解消。つまずきを経て東出はなぜ今、動物を追い、それを日々の糧とするのか。

「野生動物が好きで、いつかはそんな動物と相まみえる生活をしたいと」

 そう語る東出。スキャンダル後に仕事が激減し、時間的な余裕ができたことも確かだが、多忙だった時分から狩猟生活に対する憧憬の念があったという。

 23歳で千松信也著『ぼくは猟師になった』(新潮文庫)と出会ってその世界に魅かれ、仕事の合間を縫って狩猟免許を取得したのが29歳のとき。世間のバッシングにさらされる前のことだが、事務所との契約解消でむしろ状況は“進展”した。

「東京で居を構えようと思っても、賃貸契約を断られ続けました。狩猟で山を歩くようになってから“こっちに住めばいい”とお誘いを受け、コロナ禍でリモートによる打ち合わせが一般化したこともあって地方移住を決めたんです」

「一体、人間って素敵なのか」

 山に入り、忍び猟を始めてから実は今季で6年目。猟友会にも入っている。最初に獲物を仕留めて命を奪った際は、喪失感や拒否感が湧く一方、捕った喜びもあってさまざまな感情がないまぜに。その衝撃はとてつもなく大きかった。

「感情が容量500ミリリットルのビーカーだとすると、1頭目で200ミリリットル分ぐらいのことを感じました。それが続いていたら心はとっくにパンクしていたでしょう。一度の衝撃の量はだんだん少なくなりつつありますが、今も積み上がっています」

 思索も深まるという。

「武器を持たない動物と猟銃を手にする人間とでは決して対等とはいえません。でも、裸一貫で食べ物を求め、生を謳歌する動物に対し、大勢の人が自死を選び、少なからぬ人がスマホに時間を取られて生の実感が湧かないほど精神が疲弊している現状を見ると、一体、人間って素敵なのか」

 役者としての仕事も続ける身として、こうも言う。

「どんな生き方をしてきたかによって顔がつくられるのだとしたら、人より変わった体験をできるのが狩猟ですからね。そういう見た目になっていてくれればいいなと思います」

 周りの人に野菜や酒を分けてもらい、みんなで食べて飲んでの日々。「精神衛生上よくない場所から離れている実感がある」とも。「いずれ、この人を見ていたいというような顔になれればいいかなあ」。

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