熊大量出没の元凶は鹿だった! 「熊を駆除するだけじゃ意味がない」スゴ腕ハンターが解説

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「熊を駆除するだけじゃ意味がない」

 似たような話では、ワナにかかった鹿も熊の捕食対象になっているという。

 こうして冬場でも楽にごちそうにありつけると分かると、冬眠しない熊が出てくる可能性がある。

 増え過ぎた鹿は、熊を山から追い出す要因になる一方で、食料として熊が増えたり、熊が活動する時期を延ばしたりする要因にもなっているわけだ。

「熊の被害が増えたからといって熊を駆除するだけじゃ意味がない。鹿も含め、自然のバランスを良くする対応をしていかなければ、熊被害の問題は解決しないですよ」(望月さん)

 こうした事情を考えずに熊や鹿の駆除に対し“動物がかわいそうだ”と抗議する人もおり、望月さんによると、

「最近はそういうのに嫌気が差して、駆除しても役場に申告しない人がいるみたい」

ハンターへの悪影響

 駆除、狩猟を巡っては、弾薬の値上がり、自治体による支払額が上限に達すると報奨金が打ち切られるなどの問題もまた、ハンターの活動にネガティブな影響を与えている。望月さんは言う。

「狩猟を趣味でやっていると思って抗議している人もいるかもしれないけど、生態系のバランスが崩れた状態を放置すると山も畑も大変なことになってしまう。それに俺らは常に“人を撃ってしまったら大変なものを背負う”という思いを持ちながら山に入っている。後輩にも『慌てて撃つな。本当に鹿か、熊か、人じゃないか、周りに跳弾するものはないか、確認してから引き金を引け』と常に言っている」

 その緊張感はわれわれの想像を超えたものに違いない。

 熊被害は残念ながら、今年も発生するだろう。これを減らすためには総合的な知見にもとづく多方面からの取り組み以外に、情緒や感傷に流されない人間の側の意識変革も必要なのかもしれない。

華川富士也(かがわふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー、記録屋。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。現在はフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町、昭和ネタなどを得意とする。シリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

週刊新潮 2024年2月15日号掲載

特別読物「今年も続発必至 『熊出没』被害 根本原因はあの“愛らしき動物”」より

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