熊大量出没の元凶は鹿だった! 「熊を駆除するだけじゃ意味がない」スゴ腕ハンターが解説

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鹿による“侵略”

 そのプレスリリースにはこうある。

〈山岳ブナ林が広がる九州大学宮崎演習林(椎葉村)において、土壌侵食の指標である根の露出程度とブナの成長量との関係を調べたところ、根の露出程度が大きいブナほど成長が低いことが明らかになりました〉

 そして、こう記す。

〈本研究成果は日本の森林で深刻化するシカの下層植生採食が樹木衰退を招く一因となることを初めて示し、今後のシカの食害対策を考えるうえで役立つことが期待されます〉

 つまり、東北のブナ大凶作も増えすぎた鹿が原因である可能性が高いのだ。

 環境省の発表による「全国のニホンジカ及びイノシシの生息分布調査」の結果を見ると、東北が鹿に“侵略”されていく様子が驚くほどよく分かる。

 2003年の東北地方、鹿は岩手の太平洋側南半分に生息しているが、青森と秋田は空白。宮城と山形はポツポツといる程度。これが2014年になると、岩手で生息域は全県に広がり、青森、秋田でも生息確認地点が現れ、宮城、山形でも増加している。

鹿が熊のエサに

 そして2020年、岩手、青森、秋田のほとんどの地域で生息が確認されるようになり、宮城、山形でも着実に増えている。

 東北のブナは凶作の年が元々多かったが、鹿が増えてブナを取り巻く環境が悪化することで、これからますます凶作の年が増えていくことが予想される。

 鹿が増え過ぎて起こる問題について、望月さんはさらに別の角度から次のような話をしてくれた。

「鹿が熊のエサになるんだよ。北海道の仲間に聞いた話だけど、鉄砲の音がしたら熊が出てくるっていうんだ」

 熊が鉄砲の音に反応して姿を現す!? 鉄砲を恐れていないのか。いったいどういうことだろう。

「鹿を駆除すると、地域によって金額に差はあるけど報奨金がもらえる。鹿を撃ったら、自治体に提出する証拠写真などを撮り、あとは穴を掘って埋めるといった処理をする必要がある。けれど、大変だから処理をやらない人もいる。その時に遺棄された鹿を見つけて食べた熊が、鉄砲の音がすると鹿にありつけると学習して、近寄ってくるようになったんだ。もちろんその仲間は熊も撃ったそうだけど」

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