【追悼】「現場にいたスタローンを主役と知らず…」 「ロッキー」アポロ役、カール・ウェザースさんの大胆さを物語るエピソード
アメリカンドリームを体現
共同通信のワシントン支局長などを歴任した春名幹男さんは言う。
「70年代のアメリカは、政治も経済も自信を失っていた時期です。『ロッキー』はアメリカンドリームを体現していて、国民の心を大いに鼓舞しました」
続編ではアポロと再び対戦しロッキーが勝利。3作目では時代の寵児になったロッキーが挑戦者に敗れる。アポロは“俺たちが闘った時、お前は虎の目をしていた”とハングリー精神を失ったロッキーに言い、再起に向けて鍛え上げる。好敵手は真の友となるも、85年公開の4作目でアポロはソ連のボクサーにたたきのめされ、リング上で凄絶な死を遂げる。シリーズは2006年の6作まで続くが、最もヒットしたのはこの第4作だ。
「アポロとロッキーの絆が深かった証し」
体格が良いのでアクション作も似合う。アーノルド・シュワルツェネッガー主演の「プレデター」(87年)では謎の地球外生物を追い、襲われて絶命する役だ。
「ロッキー」との縁は続いた。アポロの遺児を主人公にした作品が2015年以降、新たに作られてきた。
映画評論家の北川れい子さんは言う。
「亡きアポロの息子のコーチとしてロッキーが登場。こうした作品ができるのはアポロが魅力的でロッキーとの絆が深かった証しです」
ウェザースさんは、19年から「スター・ウォーズ」の実写ドラマシリーズ「マンダロリアン」に出演。新たなファンも増えていた。
2月1日、76歳で逝去。
スタローンは、「彼がいなければ『ロッキー』はなかった」などと追悼した。当のウェザースさんは、生前、「自分は運が良かった」とよく語っていた。
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