マニア注目の“天空の要塞”こと「若松鉱山」が、“観光客を呼べる貴重な産業遺産”と言われる納得の理由

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「ここに来れば鉱石の精製プロセスが理解できる」

 実は軍艦島には採掘関連の機械類が残っていない。閉山後に設備が他の炭鉱に移されたためで、軍艦島だけでなく、日本のほとんどの鉱山は役割を終えると設備を撤去してしまった。

 しかし若松鉱山は設備がそのまま残された。それがいかに貴重かを、産業遺産の保存活動を続けるNPO法人「J-heritage」代表の前畑洋平氏はこう説明する。

「ここに来れば鉱石の精製プロセスが理解できる、それほど機器が残されています。機械もある選鉱場建屋で、後世に残せそうなのは、若松と足尾銅山ぐらいです」

 この国にはたくさんの鉱山があったが、閉山後に機械類がここまで現役時代に近い状態で残っているのは、実にレアなことなのだ。ゆえに「是非、保存プロジェクトに繋げたいと思っています」という。現地では若松鉱山の保存に向けた動きも始まっている。

「熱心な若い保存会メンバーがいて、きめ細かく見学希望者の対応をするなど、めちゃくちゃ頑張られています。町で保存・活用に向けた検討が行われています」

 昨年10月には日南町で「廃墟景観シンポジウム vol.2」が開催された。このシンポジウムをきっかけに、若松鉱山はテレビ、新聞、雑誌、webなど様々な媒体で取り上げられ、一気に知名度を上げた。

 日本の近代化と昭和の隆盛を語る上で忘れられない若松鉱山。活用への取り組みは始まったばかりだが、その秘めたるポテンシャルから、整備して観光地化を進めれば、将来、再び地域を盛り上げる存在になるのは間違いない。

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。記録屋。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。現在はフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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