能登半島地震は人災だった? 27年間放置された県防災計画…「死者数は7名」という信じられない予測が
「危機感が薄かったと指摘されても仕方ない」
地震本部に聞いてみると、
「全国知事会から“日本海側の調査研究を行ってほしい”との要望は受けていますが、石川県単独のものは昨年の1件を除いては記録に残っていません。他の自治体からも長期評価がなされてない箇所についての要請は受けておりますが、評価は南から順次、行っているところです」
双方の“すれ違い”がくっきりと浮かび上がるのだ。
「石川県としては、予算が限られる中、国の出す情報に依拠したかったという面があるのだと思います」
とは、東京新聞記者で、『南海トラフ地震の真実』の著書がある小沢慧一氏。
「自前で行ったとしても、後に国から異なった結果が出たりすると混乱を招く。とはいえ、国の調査も時間がかかりますし、十何年も待つのなら早めに見直しをすべきだったでしょう。危機感が薄かったと指摘されても仕方がありません」
そして言うのだ。
「長期評価は影響が大きく、国も地方自治体も、防災対策をする上で無視はできません。しかし、確率を出すには相当な時間がかかる上、その信頼度も完全に担保されているわけではありません。日本は世界で起こるマグニチュード6以上の地震の約2割が発生しているという地震大国。確率にかかわらず、どこでも危険はあるという認識の下、対応に尽力すべきです」
被災者も「次に来るのは南海トラフかと」
名古屋大学減災連携研究センターの鷺谷威(さぎやたけし)教授(地殻変動学)も言う。
「地震そのものが日本では身近な現象なのに、地方自治体レベルになると専門性を持つ人材が少ない。どうしても国に頼りがちになってしまいます。そして国の長期評価は、確率が低い地域について“安全だ”との誤ったメッセージとして受け止められてしまっている。今回の地震もそうですが、被災者たちが“不意打ちだ”と言うケースがないよう、正しく情報を発信しないと」
実際、冒頭の外さんもこう振り返る。
「報道などから、次に来るのは南海トラフ地震だと思っていた。十分な対策をしていなかった……」
防災計画や確率に惑わされず、この国ではいつどこでも大地震が起こるとの覚悟の下、各々が備えを怠らない――。これをわれわれが改めて肝に銘じることが、今回の地震の犠牲者への“弔い”となりそうである。
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