株式市場の時価総額が世界4位に…インドが歩む「第2の中国」への道に暗い影を落とす“宗教問題”
女性労働力の未活用、高い輸入関税
中国経済が急減速する中、日本企業の間でもインドブームが生じている感があるが、はたして大丈夫だろうか。
1月22日付ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は「インドがにわかに投資家や製造企業から注目を集めているが、『新しい中国』になることは困難だ」と報じている。
その理由として最初に挙げているのは女性労働力の未活用だ。インドでは女性の生産年齢人口(15歳から64歳)の3分の1しか働いていない(2022年度)。この数字は低中所得国の平均値である約50%や中国の約70%を大きく下回っており、インドは豊富な若年労働力を経済成長の「武器」にすることができていないのだ。
高い輸入関税もインドが「世界の工場」になるための足かせだ。2022年時点でインドは世界で最も輸入関税が高い国の1つとなっており、グローバル企業が活動する際、国外からの部品調達が割高になるというデメリットが生じている。
「豊かさを謳歌しているのは富裕層だけ」の指摘
インド経済の「不都合な真実」はまだある。「インドの経済成長率は主要国で最も高いが、豊かさを謳歌しているのは富裕層だけだ」との指摘がある(1月26日付日本経済新聞)。
独占禁止当局の力が弱いため市場の集中が進んでおり、一握りの大企業が支配力を強め、中小企業はコスト高にあえいでいる。現政権も大企業を優遇しているが、「大手優遇」を止めない限り、インド経済の持続可能な成長は困難だという。
「豊かさを謳歌しているはずの富裕層が海外に資金を移動している」との指摘もある(1月6日付日本経済新聞)。
インドにおける税徴収率の低さが背景にある。脱税の取り締まりに躍起になっているモディ政権は疑いのある者を執拗に追及しているが、「過ぎたるは及ばざるがごとし」。度を超した対応が災いして富裕層の活動が萎縮するような事態となれば、インド経済にとって大きなマイナスになることは間違いない。
筆者が最も懸念するのはインドの国際的なイメージが急速に悪化することだ。インド経済への関心の高まりは同国の国際的な好感度の上昇が寄与しているが、これに水を差す動きが生まれているからだ。
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