「義理チョコ」は死語になってしまうのか…それでも35円「ブラックサンダー」が売れ続ける理由
あの選手が「勝負食」として紹介
2006年にはベストセラー『生協の白石さん』の元ブログで紹介され、人気に拍車がかかるが、その名が最も広く知られるきっかけになったのは2008年、北京五輪の体操競技で銀メダルを獲得した内村航平(35)が「好物です」と“勝負食”として紹介したこと。しばらくは品切れ状態が続き、今に続く人気商品になった。高速道路のSAなどで売るご当地モノや期間限定商品など、これまでに300を超える商品が販売されてきた。
どんなヒット商品にも、様々なドラマがあるものだが、製造元の有楽製菓はユニークなキャンペーンや販売戦略でも知られる。特に2013年に展開されたプロモーションは大きな話題を集めた。その年のバレンタインデーを視野に、「ブラックサンダー」に「一目で義理と分かるチョコ」というキャッチコピーをつけてキャンペーンを展開したのだ。会社の主力商品をあえて「義理チョコ」とは…当時はどんな思惑があったのか、同社の広報担当者に聞いた。
「『ブラックサンダー』はどう考えても本命のチョコではないので、だったら義理ということを大々的に謳って『ブラックサンダー』らしく皆さんに楽しんでもらおうと考え、企画したものでした」
しかし「義理チョコ」という売り出しに、社内では「なぜやるのか?」「なぜ義理なのか?」という意見もあったという。結果的にキャンペーンは話題を呼び、翌年には東京駅の地下街に「ブラックサンダー義理チョコショップ」がオープン。「世界初の義理チョコ専門店」として、注目を集めることになった。
名実ともに「義理チョコナンバー1」の座に君臨した「ブラックサンダー」だが、同社は21年、「バレンタインをもっと自由に」とのコンセプトの下、「義理義理義理言い過ぎました」という、それまでとは逆のキャンペーンに転じる。
「2020年より少し前から『義理チョコ≒義務チョコ』というようなネガティブなイメージが増えてきたと感じていました。その流れでバレンタイン自体が楽しめないというお声も聞かれる中で、義理チョコを謳ってきた自社としては、あらためて多くの人にとって『バレンタイン』を自由で楽しむものにしたいよね、という議論がありました」(同)
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