「世界最速186キロ」「オープン戦で投げていたら長男が迷子」…プロ野球の春季キャンプで起きた珍事件 深夜の監督室に何度も泥酔して乱入した選手も

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「人類史上最速です」

 キャンプ地の練習試合で“世界最速”のMAX186キロを計測したのが、2014年の阪神・藤浪晋太郎である。

 同年、入団2年目の藤浪は、2月25日に沖縄・宜野座村野球場で行われた韓国・LGとの練習試合に5回から3番手で登板。先頭打者への初球でいきなり181キロを計測した。明らかに機械の誤作動であり、本人も思わずマウンド上で吹き出した。

 2球目はスピードガンの“暴走”も収まり、判定は甘めながら、前年記録した自己ベスト155キロを上回る156キロをマークした。ところが、次打者・朴龍澤(パク・ヨンテク。2009年の首位打者)の4球目に186キロと再び誤作動が起き、マートンも「フジナミサン、186キロね!」とビックリ。さらに6回にも177キロ、165キロが表示された。

 2回を被安打1、奪三振4の1失点に抑えた藤浪は「人類史上最速です(当時の世界最速は、レッズ・チャップマンの169キロ)。186キロ出たので調子は悪くないです。スピードガンどうこうより、感覚としてしっかり投げられた」」とジョーク交じりに絶好調をアピールした。

 和田豊監督も「今日だけではなく、課題を持って投げてくれていると思う」と目を細めた高卒2年目右腕は同年、2年連続二桁の11勝を挙げた。

「あれが一番参りました。もうホンマに……」

 地元で凱旋登板したオープン戦の試合中、3歳の長男の迷子のアナウンスを耳にして、ギョッとしたのが、阪神・藤川球児である。

 2005年2月27日、前日にキャンプ地・安芸で初のオープン戦、オリックス戦を行った阪神は、今度は高知市営球場でオリックスとの第2戦に臨んだ。

 3対0とリードした4回から2番手でオープン戦初登板をはたした藤川だったが、そんなさなかに、英子夫人と観戦に来ていた長男・温大君が迷子になってしまう。

 自らマウンドに立っているときに、迷子の場内アナウンスを耳にする羽目になった藤川は「そうなんですよ。あれが一番参りました。もうホンマに……」と困惑の表情を浮かべた。

 それでも2回を被安打2の無失点に抑え、幸い温大君もすぐに見つかった。捕手の浅井良から知らせを受けた藤川は、アイシングをしたまま、自ら球場事務所へ向かったが、ひと足早く親族が引き取ったあと。「良かった」と胸をなで下ろしたものの、この日は高知商時代の友人たちを招待していたとあって、「嫁さんに説教せな」とオカンムリだった。

 同年の藤川は、シーズン最多の80試合(当時)に登板し、7勝1セーブ46ホールドでチームの2年ぶりVに貢献したのは、ご存じのとおり。とはいえ、キャンプの時点では前年まで通算4勝と、それほど注目度は高くなかった。翌日の新聞でも、先発して3回を無安打無失点に抑えた太陽(登録名。本名は藤田太陽)が1面トップで、藤川の記事は2面以降に追いやられ、扱いも小さめだった。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

デイリー新潮編集部

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