「世界最速186キロ」「オープン戦で投げていたら長男が迷子」…プロ野球の春季キャンプで起きた珍事件 深夜の監督室に何度も泥酔して乱入した選手も
泥酔して門限破りの“酒仙投手”
2月1日にスタートしたプロ野球の春季キャンプも、いよいよ後半に突入する。キャンプといえば、シーズン中にはあり得ないような珍ハプニングや珍エピソードも目白押し。そんな思わずビックリのキャンプ珍事件簿を紹介する。【久保田龍雄/ライター】
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泥酔して門限破りのご帰還をした際に、間違えて監督の部屋に押し入った武勇伝で知られるのが、“酒仙投手”の異名をとった阪急時代の今井雄太郎である。
西本幸雄監督時代の1972年の高知キャンプ。入団2年目の今井は、とっくに門限を過ぎた時間に泥酔して宿舎に戻ってくると、「今井雄太郎、ただ今帰ってまいりました!」と大声を張り上げて、上機嫌で部屋に入ってきた。
ところが、そこは若手の相部屋ではなく、なんと、西本監督の部屋だった……。「誰じゃ、こんな時間に!!」と一喝された今井は、慌てて退散していった(「週刊ベースボール」1984年5月21日号)。
また、「フライデー」2019年3月17日号には、入団2、3年目のキャンプで、先輩の山田久志に「マッサージしたいなぁ。雄ちゃんの部屋は空いてるか?」と聞かれ、同僚と間違えて就寝中の西本監督の掛け布団を引きはがしたという話が登場する。同じ話なのか、それとも“乱入事件”が2度あったのか、判断に迷うところだ。
「時々、間違えてワシの部屋に入ってくるんやから、かなわんわ」
さらに、上田利治監督時代の1977年の高知キャンプでは、これまた泥酔して宿舎に帰り、間違って上田監督の部屋のドアを勢いよくバターン! 驚いた上田監督が「だ、だ、誰や!」と誰何すると、「ハイッ、今井雄太郎であります。ただ今帰りましたッ!」と直立不動で最敬礼すると、自分の部屋に逃げ帰ったという(「魔球伝説『ナンバー』編」文春文庫)。
だが、今井が間違えて上田監督の部屋に入ったのは、主力に成長し、監督の真上の部屋を与えられたとき(上田監督が再任した81年以降)という説もある。
“酒豪伝説”は尾ひれがついて語られることも多いが、上田監督自身も「今井はいつも酔って朝帰りや。ドタンドタンとやっているから目が覚める。時々、間違えてワシの部屋に入ってくるんやから、かなわんわ」(「プロ野球伝説の勇者たち 阪急ブレーブスクロニクル」 スコラマガジン)と回想しているので、少なくとも1度や2度ではなかったかもしれない。
その今井は、後輩の佐藤義則が87年のキャンプ中、酒気帯び運転で謹慎処分を受けたときに、山田と食事に出かけた寿司店で、折詰をお土産に買ってくる優しさを見せていた。「ありがたいのだけれど、5~6軒ハシゴするでしょ。宿舎に戻ってくるころには、いつも折詰がペシャンコにつぶれてるんだ」(前出スコラマガジン)。思わずクスリとさせられながらも、当時の阪急投手陣の絆の強さを実感させられるようなエピソードだ。
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