妻の不倫相手が臆面もなく現れた… 対峙した47歳夫が「自分も同じ穴の狢になった」と感じた瞬間

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ある種の諦めが…

 彼に会ったことは妻には話さなかった。義妹が妻に話したかどうかは関知していない。その後、忍さんとは行き来はあるが個人的な関係は消滅した。彼女が消滅と感じているのか中断と感じているのかはわからない。

「コロナ禍もあって、妻と田所氏との関係も変化があったかもしれません。ふたりのことを考えると身がよじれそうに苦しいときもあるし、まあ、好きにすればいいと思うこともある。彼らはフリーセックス信奉者なのか、妻はオープンマリッジをしたいのか、そのあたりもよくわからない。僕自身も揺れ動いたまま時間を過ごしてきただけ。年齢を重ねるにつけ、人生なんて短いのだから、好きなように生きるしかないんだろうなとある種の諦めみたいなものも感じるようにはなっています」

 未来ある娘は大学生になった。彼女がどんな恋愛観をもつのかについては少し興味があるが、今は学生生活をひたすら楽しんでいるようだ。

「妻とは週末、ふたりで食事に行くこともあります。お互い、今も家庭を壊す気はないみたいです。妻の気持ちを詳細に知りたいわけでもなく、かといって今さら他の女性に依存するつもりもないので、僕は今の淡々とした生活が嫌ではないんです。でも、なんだかこれが幸せなのかと考えることもあって……。じゃあ、どうしたら僕はもっと幸福感を覚えることができるのかと思うと、それもはっきりしない。そもそも幸福って何だろうと考えてしまう」

 義妹は結婚してすぐ妊娠、男の子をひとり生んだ。案外すんなり家庭になじみ、今のところ家庭を築いていくことが楽しいようだ。夫ともうまくいっているらしい。

「70代半ばになった義母は元気で楽しそうに生きています。なんだか僕だけが曖昧模糊とした気持ちを抱えて、ゆらゆらしている。そんな気がします」

 浮気も不倫も結婚も、そこに情熱を持っている人にとっては活力源となるのかもしれないし、興味のない人には何の価値もないものだろう。人生のどこに価値を見いだしたいのか、何が自分のエネルギーになるのかは人それぞれ。決めるのは自分自身なのだが、決めずに揺れ動いて生きるのもまた、人生かもしれない。

前編【妻は浮気をしているのでは… 夫婦の“微妙な亀裂”を見て見ぬふりしてきた47歳夫をまちうけていた「まさか」の展開】からのつづき

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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