妻の不倫相手が臆面もなく現れた… 対峙した47歳夫が「自分も同じ穴の狢になった」と感じた瞬間

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存在を拒否したいと思いながらも…

 遼子に頼まれて僕に会いに来たのかと彼は尋ねたが、田所氏はそういうことではないと言い張った。幸司さんは妻が浮気していると思っているかもしれないが、これは浮気とか不倫というカテゴリーには入らない関係なんだ、と。屁理屈でしょと幸司さんは一蹴した。

「幸司さんは忍さんに対して、どういう感情を抱いていましたか? と彼に聞かれました。恋愛感情なのか支配感情みたいなものもあったのか、あるいはただの遊び、スポーツみたいなものと考えていたのか。正面切ってそう言われて、僕、答えられなかったんです。忍ちゃんとは遊びというわけではなかったけど、じゃあ、恋愛なのかと聞かれるとそうだとも言いづらい。『ね、結局、人との関係なんて、浮気だ不倫だと決めつけることができるものでもないし、なりゆきから会うのが習慣になってしまうケースもあるし』と言われて、確かにそうだなとは思いました。だからといって、遼子がこの男性と関係をもっているということが事実としてうまく認識できなかった」

 田所氏の存在を拒否したいと思いつつ、彼の爽やかな口調に乗せられ、いつの間にか世間話や趣味の話などで盛り上がっていた。ハッと気づき、「僕はあなたとこんなプライベートな話をしたくなかった」とつぶやいた。

「彼は朗らかに笑って、『そうですよね。でもこれも何かの縁なのかな』なんて言って。彼は義妹の夫と飲食店を共同経営しているんだそう。義妹がその店に行くようになり、妻を連れていったことがきっかけで親しくなったと、田所氏はあっさり白状しました。夫と愛人が話してるのはおかしいよねと改めて言うと、『そうやってカテゴライズするからおかしくなるんですよ。僕らはひとりの人間同士というだけのことじゃないですか』と。彼は僕や遼子より10歳も年下なんですよ。不思議な考え方をする男だなと思いました。何ものにもとらわれていないというか」

 あ、でも夫には僕に慰謝料を請求する権利はあると思いますと彼は言った。さすがにその言葉には幸司さんも笑ってしまい、「同じ穴の狢になった」と感じたそうだ。

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