妻は浮気をしているのでは… 夫婦の“微妙な亀裂”を見て見ぬふりしてきた47歳夫をまちうけていた「まさか」の展開

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義妹が暴露した妻の“本性”

 30代後半、仕事が忙しい時期だったが、あるとき忍さんから連絡があった。ふたりきりで会いたい、相談に乗ってほしいということだった。

「義妹も30代に入って、そろそろ結婚でも考え始めたのか、あるいは恋愛トラブルかと思いながら待ち合わせ場所に行ったんです。すると彼女は、『幸ちゃん、おねえちゃん、やっぱりちょっと怪しいかも』と。以前、彼女が思わせぶりな態度をとったことから僕が妻に対して疑心暗鬼になったのを思い出しました。『そのことなら覚えている』と彼女も言うんです。『前のときは、おそらく独身時代の元カレ。今回は違う男だと思う。おねえちゃん、昔から浮気癖があったのよ。幸ちゃんには言わないでおこうと思ったけど、こう続くと気の毒になっちゃって……』と、写真を見せてくれたんです。確かに妻と男が身を寄せ合ってホテルに入っていくところだった」

 想像以上にショックが大きかったと幸司さんは小声になった。常に優先順位を定めて、ものごとをテキパキと処理し、そのころは夫婦仲も悪くなかった。特に母親が近くで暮らすようになってからは遼子さんも明るくなったと感じていたのに。何が不満で他の男に走るのか。自分ではダメなのか。自分の何がいけないのか。

「おねえちゃんは刺激を求めるタイプなのかもねと忍が言うんです。幸ちゃん、かわいそう。こんなにいい夫なのにって。顔を近づけてきた忍の香水がやけに鼻の奥を刺激する。僕、いつの間にか泣いていたんですよね。忍は『かわいそうだよ、幸ちゃん。かわいそう』と言いながら喫茶店を出ると腕を組んできて、気づいたらホテルに入っていました。本当に呆然としていたので、義妹の誘導に気づかなかったんです」

 ホテルの部屋に入ってから、幸司さんはハッと我に返った。こんなところに義妹といていいはずがない。「忍ちゃん、冗談はやめよう」と言うと、義妹は彼にしがみついてきた。

「私は高校生のおねえちゃんが幸ちゃんとつきあっているころから、幸ちゃんのことが好きだった。私のほうが浮気者のおねえちゃんより、幸ちゃんを幸せにできる。離婚なんてしなくていい、今日1日だけでもいい。私の思いを叶えて。お願い」

 切々と訴える忍さんを、幸司さんは突き放すことがどうしてもできなかった。突き放すべきだとわかってはいたが、理性とは裏腹に彼女を抱き寄せてしまった。

「あとのことなど考えられなかった。今、この場での義妹の望みを叶えたい。僕なんかでいいならいくらでも、という気持ちになってしまったんです。善悪なんて考えられなかった」

 妻の浮気で頭がいっぱいだったところへ、より直接的な刺激を受けて幸司さんの理性は働かなくなったのかもしれない。決して投げやりな気持ちではなかった。むしろ義妹への感謝の気持ちが強かった。求められることで、その日、幸司さんもまた救われたのだ。

後編【妻の不倫相手が臆面もなく現れた… 対峙した47歳夫が「自分も同じ穴の狢になった」と感じた瞬間」と感じた瞬間】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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