「河野談話はファクトチェックなしで作られた」 元慰安婦の「心証」を基にした談話は破棄すべき、と専門家が指摘

国際 韓国・北朝鮮

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公文書による事実確認がなされず…

 私は占領軍の情報将校に聞き取り調査を行ったことがあるが、その経験からいえることは、証言者は自分の評価を上げるような内容は積極的に話すが、評価を下げるような内容は話したがらないし、話しても虚偽を交えるということだ。元慰安婦の場合は後者に該当する。

 聞き手は話し手と長い時間をかけて信頼関係を築かなければ、本当のことは話してもらえない。また、本当かどうか確認しつつ聞くためには、話し手のことをよく知っておかなければならない。そのためにも、公文書などで事実確認をすることが必要だ。

 ところが、河野氏が言及している宮沢総理訪韓で、元慰安婦とされる女性たちの話を総理が聞いたとき、このような公文書による事実確認は行われなかった。韓国側がアレンジした元慰安婦と初対面で会って一方的な話を聞いただけだった。しかも、彼女たちの話した内容の記録は残っていない。恥を忍んで慰安婦だったと名乗り出て、外国の首長の前で、人前ではなかなか言えないことを話すのだからということで、歴史研究からすれば当然すべきことをしなかったのだ(アジア女性基金「石原信雄元官房副長官インタビュー」参照)。

心証をもとに談話を出してしまった理由

 とはいえ、河野談話は93年8月に出されており、92年1月の宮沢総理訪韓からはしばらく時間がたっている。この間に公文書などを十分に調査して、事実確認をすることができたはずだ。なぜ、それをしなかったのかも、この口述記録は明らかにしている。

「ただ、具体的に連れてこいとか引っ張ってこいという軍の資料は残っていないけど、軍がそんな公式文書を残すわけがないよね。当時の内務省の事務官だった奥野誠亮さんが、終戦の日に軍の資料をいっぱい燃やして処分したとインタビューでも言っているとおりですよ」

 つまり、河野氏は、日本軍は慰安婦の強制連行を行ったのだが、そのような都合の悪い文書は終戦の日に焼却処分してしまったに違いないと勝手に思い込んでいた。だから、そのような文書はすべて日本軍が証拠隠滅してしまったに違いないという誤った結論に飛びついてしまった。そのような文書はないのだから、日本軍は強制連行などしていないという正しい結論にはたどり着けなかった。これが公文書をチェックせず、慰安婦とされる女性たちの話をファクト・チェックを一切せず聞いて、事実であろうという「心証」をもち、それをもとに河野談話を出してしまった理由だろう。

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