「河野談話はファクトチェックなしで作られた」 元慰安婦の「心証」を基にした談話は破棄すべき、と専門家が指摘
「なぜ日本は認めたのか」
さらに、ハーバード大学法科大学院教授のジョン・マーク・ラムザイヤー氏は「太平洋戦争における性契約」で、慰安婦は抱え主と合法的な契約を結んだ「娼妓」であり、その制度は日本の公娼制度の延長線上にあると歴史資料をもとに述べた。
そして、私も『「慰安婦」はみな合意契約をしていた』で、慰安婦は必要書類をそろえて親権者と一緒に警察署に行かなければ、営業許可書がもらえず、それがなければ慰安所がある海外へ渡航できないこと、また慰安所の日本軍責任者は必ず契約書の有無をチェックしていたことなど、歴史資料をもとに契約プロセスを明らかにした。つまり、強制連行はもとより、だまして慰安婦にすることも制度上はできなかったのだ。
ところが、アメリカの日本研究者およびアジア史研究者のほとんどは、日本軍が朝鮮人女性を強制連行して性奴隷にしたことは、日本政府が公式に認めていることなのに、それを覆そうとするラムザイヤー氏と私は、「歴史修正主義者で、歴史否定主義だ」と非難している。歴史資料をもとに反論しても「それならなぜ日本政府は、日本軍が慰安婦を強制連行したことを認めたのか」と反論してくる。
日本は裁判で負け続けることに
このように、河野談話は単に日本人の名誉を傷つけているばかりか、慰安婦について事実を述べた研究者が名誉毀損で訴えられる根拠にもなり、歴史研究において慰安婦についての歴史的事実を議論する上でも障害になっている。
さらにいえば、裁判においても、河野談話は障害となっている。去年の11月、韓国の高裁が慰安婦損害賠償請求裁判で、主権免除を根拠に日本を無罪にした一審判決を覆して、日本に元慰安婦に対する賠償を命じた判決を出した。主権免除とは、被告が国または下部の行政組織の場合、外国の裁判権から免除されるというもの。
この裁判でも、主権免除が適用されうるかどうかが争点になり、旧日本軍が朝鮮人女性に不法行為を行ったという事実認定は問題にされなかった。河野談話がある以上、それは日本政府も認める事実であり、もはや議論する必要もないとされているのだ。
最近の世界的傾向として主権免除の適用は限定される方向にあり、今後も慰安婦損害賠償請求裁判でこれを争点とするならば、日本はこの種の裁判で負け続けることになる。にもかかわらず、不法行為があったかどうかを争うことは、河野談話がある限りできないのだ。
このような問題点を念頭に置いたとき、今回公開された聞き取りの口述記録はどのように読めるのだろうか。
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