「乾き切ったスポンジのよう」 春風亭小朝が語る坂東玉三郎の驚異的な柔軟さ
歌舞伎役者の坂東玉三郎(73)と、かねて親交のある落語家の春風亭小朝(68)が1月に取り組んだ舞台が話題を呼んだ。大阪松竹座での「坂東玉三郎はるのひととき」で、二人の競演は昨年7月の京都南座公演「坂東玉三郎 夏のひととき」以来のこと。2度目の取り組みを小朝が語った。
【写真を見る】小朝が「まるで生きるスポンジ」と評する坂東玉三郎
「昨夏の南座も今年の松竹座も“二人で何かやろう”という企画会議から始まりました。玉三郎さんは、自分と私の文字通り“二人で作り上げる公演”という意識がお強いですね」
「お互いの例え方が全く同じだった」
松竹座では玉三郎が女性特有の憂いや情念、艶などの感情を胸に秘めつつ表現する地唄舞を、小朝が古典の名作「芝浜」を披露。加えて、シャンソン歌手や女優として活躍し、昭和55年に56歳の若さで死去した越路吹雪が主人公の「越路吹雪物語」を上演した。
小朝はほかに、越路の数々のエピソードを盛り込んだオリジナルの人情噺(ばなし)「越路吹雪物語」で高座に上がった。その合間に玉三郎は「愛の讃歌」「ラビアンローズ」など、越路が愛したシャンソンの名曲を歌って大いに観客を沸かせた。
「あの噺は十数年前に自分で作りました。玉三郎さんに“こういう新作落語があるんです”と話したところ、すぐに“これでやりましょう”と聞き入れて下さった。玉三郎さんは、乾き切ったスポンジが瞬く間に水を吸収していくように、常に僕の提案を吸い上げて下さるんです」
その玉三郎は、公演に向けた記者会見で小朝のことを同じように評していた。
「私のことを“何でも吸い取ってくれるスポンジのような人”と仰られたそうなんです。お互いの例え方がまったく同じだったので、この偶然には本当に驚かされました」
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